PwCが4月6日に発表したレポートによると、業界におけるM&Aと資金調達は減少したにもかかわらず、2019年、暗号資産(仮想通貨)企業による同業者の買収は続いた。
M&Aの状況
M&Aでは、仮想通貨企業によるM&Aの割合は、2018年の42%から2019年は56%となった。一方、M&A件数は、2018年の189件から2019年は114件に減少し、買収額の合計は、19億ドルから4億5100万ドルへと76%の大幅減となった。
各社は、自社サービスを補助するようなサービスを提供する、より小規模な企業を買収することが可能だったとPwCのグローバル仮想通貨責任者アンリ・アルスラニアン(Henri Arslanian)氏はCoinDeskとのインタビューで語った。
「いくつかの大手企業がさらに大きくなることを見込むべきだと考えている。しかし、直接の競合を買収することによってではない」とアルスラニアン氏は述べた。
「拡大は、垂直方向ではなく、水平方向に大きくなることによってだ。ユニコーンが、仮想通貨エコシステムのさまざまな領域に触手を伸ばしたタコのようになりつつある」
資金調達の状況
一方、資金調達では、減少はM&Aほどひどくはなかった。また資金調達案件に占めるポストシードラウンドの割合は8%上昇し、業界が成熟しつつあることを示した。
「これも、この先見込んでおくべきことだと考えている。業界が成熟するにしたがって、多くの仮想通貨VCが成功を収めるのに十分な案件と、十分なイグジットが存在するようになる」
資金調達額の合計は、2018年の37億2000万ドルから40%減少して22億4000万ドルとなった。案件数は662件から540件へと122件減少したが、減少幅で見ると小さく、18%減少に留まった。
2019年第2〜3四半期のビットコイン価格の上昇は、資金調達の減少を食い止めることはできず、2020年は世界的な経済低迷が資金調達にさらに影響をおよぼすと想定すべきとレポートは述べた。
CVC、アジアの台頭
2019年、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の関与は2倍になり、案件全体の6%を占めた。ヨーロッパやアジアで規制上の枠組みが明確になるにしたがって、機関投資家の注目も増えている。アルスラニアン氏がアドバイスしている、長期的な投資戦略を持つファミリーオフィス(超富裕層の資産運用などを行うサービス)も、時間とともに仮想通貨にますます関心を寄せていると同氏は語った。
投資を受ける企業のタイプも前年と比べて変化した。2018年、VCからの資金の大半はブロックチェーンインフラプロジェクトに注がれたが、2019年には、コンプライアンスと規制関連企業が最も多くの投資を受けた。
案件はまた、アメリカからアジアとヨーロッパに移っており、地域別に見た割合では、それぞれ8%増、6%増となった。2019年、仮想通貨業界での資金調達とM&Aの件数の過半数を、初めてアメリカ以外が占めた。
新たな機関投資家を求める企業は香港に押し寄せ、一方、個人投資家を求める企業はシンガポールの新たな規制上の枠組みを検討しているとアルスラニアン氏は付け加えた。
「アメリカとヨーロッパの数多くの大手企業は、事業拡大の観点からのみならず、戦略的投資家からの資金調達という観点でも、アジアを真剣に検討していることは間違いない」
レポートは以下。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:PwC Global Crypto Lead Henri Arslanian image via CoinDesk archives
原文:Crypto M&A and Fundraising Dropped Sharply in 2019: PwC Report