インド、暗号資産取引が盛んに──銀行破綻、新型コロナが影響か

世界第2位の人口を誇るインドでは、国内の経済問題と新型コロナウイルスによる全国規模の封鎖のなか、暗号資産(仮想通貨)の普及が加速している。

裁判所の判決

3月4日、インドの最高裁判所は、銀行が暗号資産(仮想通貨)を扱う事業体へのサービスを提供することを禁じた、同国の中央銀行「インド準備銀行(Reserve Bank of India)」の2018年4月6日の命令を覆した。それが始まりだった。取引所での取引はすぐに勢いを増した。

「最高裁判所の決定によって事態が明確になったため、インド人顧客にサービスを提供する取引所の取引高にかなりの増加が見られる」と、暗号資産取引所コインスイッチ(CoinSwitch)の創業者兼CEOアシシュ・シンガル(Ashish Singhal)氏は述べた。

暗号通貨プラットフォームのカシャー・インディア(Cashaa India)は、最高裁判決から48時間で取引高が800%増加したと指摘した。

「また最初の24時間で600ビットコインを超える取引があった」と、キャシャーのクマール・ガウラブ(Kumar Gaurav)CEOは語った。

その頃、インドのトレーダーは焦っていた。その主な理由は、政府が暗号資産を違法と宣言することで介入するという噂があったためだ。

「すべてのトレーダーは、最高裁判所の判決によってもたらされたチャンスを生かそうとしていた」とガウラブ氏は述べた。それがおそらく、取引高の最初の急増を煽った。

国内外で問題が続くなか、以来、勢いは衰えていない。

金融パニック

インドで4番目に大きなイエス銀行(Yes Bank)が3月6日に破綻し、インドの銀行システムの信頼性に打撃を与えたあと、取引はさらに活発化した。

イエス銀行の破綻によって引き起こされた全国規模のパニックは、ビットコインに有利に働き、カシャーのデータによると、同プラットフォームの1日の売上の増加率は250%から450%に上昇した。

株式や債券などの伝統的な市場は、ヨーロッパやアメリカで新型コロナウイルスが勢いを増すなか、3月にパニックを起こした。インドの株式指数NIFTY50は3月、23%下落し、インドルピーは1ドル77.40ルピーと記録的な下落となった。

さらに、インドのナレンドラ・モディ首相は3月24日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために、3週間の全国規模の封鎖を発表した。

しかし、伝統的市場の急落と外出禁止令は、インドの人たちの暗号資産への投資を止めることはなかった。

「3月は最も好調な月となり、前月から取引高は2倍になった」とコインスイッチのシンガル氏は述べた。

ムンバイに拠点を置く暗号資産取引所ワジールX(WazirX)も、新型コロナウイルス危機の間に成長した。

「封鎖の間に、申し込み数は25%増加した」とワジールXの創業者兼CEOニスチャル・シェティー(Nischal Shetty)氏は語った。

24時間年中無休

ビットコインへの投資家の関心は、月曜から金曜の午前9時から午後3時30分まで取引が行われるインドの株式市場とは対照的に、24時間取引ができることによって支持されて可能性が高い。

さらに、ビットコインは、現在の新型コロナウイルスのパンデミックのような状況を想定して作られた、分散型、ピアツーピア、ボーダレスな決済メカニズムだ。

一説では、外に出られず、ビジネスができない期間が長引けば長引くほど、ビットコインはさらに便利になると言われている。その理由は「安全な自宅から送ったり、受け取ったりできるから」とタイタス・インベストメント・アドバイザーズ(Titus Investment Advisors)のCEOでビットコイントレーダーのジャスティン・ジレスピー(Justin Gillespie)氏はCoinDeskに語った。

ここ1カ月に見られた取引高の増加を判断基準にするなら、投資家の関心は間違いなく高まっているようだ。

「30日間で、ワジールXの1日の取引高は60%増加し、合計で10億ルピー(約1300万ドル)を受け取った」とワジールXのシェティーCEOは語った。

一方、暗号資産取引所コインDCXは、ビットコイン/インドルピー(BCT/INR)ペアの取引高が78.36%増加した。

「BTC/INR市場で、800ビットコインの取引もあった」とコインDCXのチーフエグゼクティブ、スミト・グプタ(Sumit Gupta)氏は語った。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Crypto Trading Volumes Rise in India After Banking Crisis, COVID-19 Lockdown