ロンドンに本社を置くCheckout.com(チェックアウト・ドットコム)が、デジタル通貨「リブラ」の開発を進めるリブラ協会に加盟した。設立から7年、国際送金・決済ビジネスで企業価値を伸ばしてきた英フィンテック企業の狙いは何か?
チェックアウトは4月28日、スイス・ジュネーブにあるリブラ協会への参加をブログで発表。リブラ協会のホームぺージにも、同社の名前と会社ロゴが記載された。
昨年6月にその構想を明らかにしたリブラだが、これまでにVisa、マスターカード、ペイパル、ストライプなどの大手決済企業が同協会から脱退した。チェックアウトは加盟企業としては24社目になった。
企業価値2000億円超の英フィンテック
チェックアウトが展開するサービスは、企業が国境をまたぐ決済や、国際送金を行うためのプラットフォーム。クレジットカードやデビットカード、アップルペイ、ペイパルなどの決済サービスにも対応している。昨年5月には、約2億3000万ドル(約245億円)の資金をシリーズAラウンドで調達し、企業価値は20億ドルに拡大したと報じられた。
今では、韓国のサムスングループや英オンライン・フードデリバリーのDeliveroo、フィットネスのヴァージンアクティブ(Virgin Active)などが、チェックアウトの顧客リストに載る。
チェックアウトがリブラ協会加盟のラブコールを送った理由は何か?
1つは、創業者・Guillaume Pousaz氏が惚れこんだリブラのフィロソフィーだ。フェイスブックが主導してきたリブラ構想は、独自のリブラブロックチェーンを開発・活用したデジタル経済圏を作り、銀行口座を持たない数十億の人たちに金融サービスを与えるというもの。リブラ通貨は、フェイスブック傘下のカリブラが開発するウォレットで管理することが可能で、世界中のどこにいても送金や買い物ができる。
規制の不在で決済インフラは作れない
「リブラ協会には、このフィロソフィーに共感する仲間たちが存在する。そして、熟慮された現実的なアプローチで、ブロックチェーンをより優れたものにフル活用しようとしている」とPousaz氏はブログで述べている。
一方、リブラ協会は当初、複数の法定通貨で裏付けられたデジタル通貨を発行・流通させるとしていたが、4月16日に構想の変更を発表。リブラの決済システムは、当初の複数通貨で裏付けられるバスケット型リブラだけでなく、米ドルや英ポンド、ユーロなどの単一の法定通貨に連動する1通貨型リブラにも対応していくとして、方針を大きく変えた。
多くの欧米の政府高官や規制当局者らは、リブラは通貨主権を損なう恐れがあるなど、反論を繰り返してきた。今回の方針転換は、それに対する大きな譲歩とも言える。
リブラ構想に共感する一方でPousaz氏は、ブログの中で「エコシステムを不正行為から守るためにも、規制はフレームワークを作る上での重要なピース。規制の不在は、たとえ技術のみが進化しても、安全で安定した決済インフラを作ることはできない」と加えている。
2012年の設立からこれまで、チェックアウトは社員数を500人以上に拡大。ロンドンに本社に置きながら、拠点をパリやベルリン、サンフランシスコ、シンガポールなどの世界9カ所に広げている。チェックアウトの加盟で、リブラ協会はその構想をピッチを上げて進めて行く。
また、リブラ協会の方針転換は、今後さらに加盟企業を増やす可能性があるだろう。
文:佐藤茂
写真:Checkout.comのブログより