米ストライプ、元Apple法人統括を日本共同代表に起用──企業価値4兆円の決済ベンチャーが投資拡大

あらゆる企業のサイトに数行のコードで決済機能を搭載できるとして、アメリカで爆発的な人気を集めてきたオンライン決済のストライプ(Stripe)が、日本における事業拡大を本格化させる。

ストライプは5月27日、Apple日本法人で企業向けデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進をリードしてきた荒濤大介(あらなみ・だいすけ)氏を、ストライプジャパンの共同代表に起用したと発表した。同氏は過去にマッキンゼー(McKinsey & Co)で金融機関向けのコンサルティング業務を主導してきた。

2010年にサンフランシスコで生まれたストライプは今年4月、グローバル市場における事業拡大を進めるために6億ドル(約645億円)の資金を調達したと発表。人員をさらに増強し、テクノロジー部門の拡充を図っていくとした。調達時における同社の企業価値は、360億ドル(約3兆9000億円)に達したと報じられている。

東京に新たな開発拠点を設立

ストライプジャパンの共同代表取締役・
荒濤大介氏(写真:Stripe)

これまでに、ベンチャーキャピタル世界大手のセコイア・キャピタルやアンドリーセン・ホロウィッツの他に、イーロン・マスク氏やピーター・ティール氏らがストライプに出資し、「シリコンバレーで最も価値の高いスタートアップ」と呼ばれるようになった。

ストライプは27日、東京に新たな開発拠点を開設したことも明らかにした。日本企業のニーズに応えるため、同社が展開する決済プラットフォームの機能を拡大しながら、新たな製品の開発を進めていく。

ストライプジャパンのエンジニアリング部門を統括し、共同代表を務めるのはダニエル・ヘフェルナン氏。同氏は、ストライプを創業したアイルランド出身のパトリック・コリソン氏とジョン・コリソン氏(兄弟)の幼なじみで、日本語を流暢に話すエンジニアだ。東京大学で情報理工学修士号を取得した後、クックパッドでエンジニアとして働いた経験を持ち、今後ストライプジャパンの開発部隊を率いていく。

Zoom、インスタカート、ドアダッシュ

食料品の即日配達サービス「インスタカート(Instacart)」のモバイルアプリ(写真:Shutterstock)

日本のeコマース市場は過去10年で2倍以上に拡大し、その規模は約18兆円。新型コロナウイルスの感染拡大が人の活動を抑制するなかで、オンラインでモノやサービスを購入する環境を整備する動きはさらに活発化しそうだ。

共同創業者のジョン・コリソン氏は4月の発表文でこう述べている。

「医師の診察や、スーパーの買い物でインターネットを使おうとは夢にも思わなかった人が、今ではその必要性からネットを利用している。事業のオンライン化に躊躇していた企業は、急ピッチでオンライン企業になろうとしている。今はスピードを緩める時ではない。むしろ、ストライプのプラットフォームにさらなる投資を行う絶好のタイミングだ」

食品配達のドアダッシュやインスタカート、ウエブ会議サービスのZoomなどの多くの企業がストライプを利用している。2トップ体制の下、ストライプジャパンはどう戦略的に日本市場で拡大を図っていくのだろうか。

文・編集:佐藤茂