2020年、暗号資産(仮想通貨)で最も期待されていたビットコインの3度目の「半減期」を迎えるにあたり、マイニングプールのF2プール(F2Pool)はブロックチェーンに今後永遠に残る秘密のメッセージを挿入した。
ブロックに挿入したメッセージ
同社のロゴを表す魚の絵文字に続けて、F2プールはニューヨーク・タイムズの見出しから次のテキストを追加した。
「NYTimes 09/Apr/2020 With $2.3T Injection, Fed’s Plan Far Exceeds 2008 Rescue(ニューヨーク・タイムズ 2020年4月9日 2兆3000億ドルの資金供給、FRBの計画は2008年の救済策をはるかに上回る)」
ビットコインの古株たちにとって、その意味は明らかだ。
ビットコインの生みの親サトシ・ナカモト氏は2008年の金融危機に言及しつつ、ビットコインは関連する体系的な問題を解決できるかもしれないことを示唆して、最初のブロックにいたずら半分で同じように新聞の見出しを埋め込んだ。その事実を踏まえたものだ。
半減期直前の最後のブロック
5月11日、F2プールは偶然にもビットコインの「半減期」直前の最後のブロック報酬を勝ち取り、テキストを埋め込むことができた。
F2プールの共同創業者ワン・チュン(Wang Chun)氏は、米CoinDeskのバーチャルカンファレンス「Consensus: Distributed」のインタビューで、これは自身のアイデアで、ここ数カ月の多くの見出しを「慎重に」検討し、完璧なメッセージを見つけたと述べた。
「歴史は繰り返した。新型コロナウイルスのために、サトシが2008年に目撃したような救済策が相次いで行われている。だがその規模はより大きく、ビットコインが再発明されたかのようだ」とチュン氏はインタビューの後、CoinDesk宛てのメールに記した。
「世界経済の環境変化とともに、さまざまな国の中央銀行は徐々に、積極的な(量的緩和)政策を採用している。我々は、サトシ・ナカモト氏の懸念はそこにあり、2008年の金融危機以降、より深刻になっていることを理解していた」とF2プールのキンフェイ・リー(Qingfei Li)CMOは、経済刺激を目的に資金供給を増やすために中央銀行が長期資産を購入する政策である量的緩和に言及しながら述べた。
今回のF2プールの取り組みは、サトシ・サカモト氏が行った前例を知っており、最初のブロックの象徴的な重要性を理解しているビットコイナーたちの人気を集めている。
暗号資産関連の教育者アンドレアス・アントノポラス(Andreas Antonopolous)氏はこの取り組みを「象徴的」と呼び、スケーラー・キャピタル(Scalar Capital)の共同創業者リンダ・シェ(Linda Xie)氏は「少し涙ぐんでいるけど、おかしいかな?」とツイートした。
ビットコイン新時代
2009年、ビットコインのプログラムが初めて実行された時、サトシ・ナカモト氏はブロックに次の文章を追加した。
「The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for banks(タイムズ 2009年1月3日 首相は銀行への2度目の救済措置の瀬戸際)」
サトシ・ナカモト氏は、ビットコインは銀行への救済措置を止めると述べてはいないが、コミュニティはこの秘密のメッセージをビットコインの目標を示すものとして受け取るようになった。つまり、現在の金融システムに内在する問題や破損を修復することだ。
F2プールがニューヨーク・タイムズを選んだのは、同紙がアメリカにおいて、イギリスのタイムズに相当するものであり、最初のメッセージをさらに繰り返しているためだとチュン氏は述べた。
同氏によると、このメッセージを埋め込むことに半減期を選んだのは、ビットコインにとって「新時代」を示すようなものだからだ。
「ビットコインが半減期を迎えるたびに、我々はビットコインが新時代に入っていることを目撃している。境界線はきわめて明確だ」とチュン氏は付け加えた。
自由を取り戻す
チュン氏はスター・ウォーズを引き合いに出して、ビットコインの「エピソード3」の始まりを示すものだとさえ述べた(チュン氏はスター・ウォーズに例えることを好む。スター・ウォーズのオープニングを真似た動画で、チュン氏は聖書を思わせる感じでビットコインの始まりについて述べた。「はじめに神は天と地とホワイトペーパーを作った」と)。
スター・ウォーズの始まりは「エピソード4」だと思うだろうが、忠実なプログラマーとして、0から数え始めたとチュン氏は述べた(編集部注:スター・ウォーズの本編は9本作られているが、中盤のエピソード4が第1作として公開された。エピソード3は公開年は遅いが、その前の時代を描いている)。
リー氏によると、半減期はビットコインの成熟のサインでもある。
「ビットコインの半減期はビットコインブロックチェーンと暗号資産市場の全参加者にとって、非常に記憶に残る出来事であり、通貨実験、つまりビットコインブロックチェーンは12年近く成功を続け、この先も続いていくことを意味している。そのようなタイミングでニュースを埋め込むことはきわめて記念となることだ」とリー氏は述べた。
チュン氏は「経済の専門家」ではないことを指摘しながらも、ビットコインは、よりコントロールを持っているユーザーのものというビットコインコミュニティ内の普遍的な見解を端的に表した。
「ビットコインは人々にコントロールと自由を取り戻させた。銀行が100年ほど前に奪って以来、初めてのことだ」
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Twitter
原文:‘History Has Repeated’: F2Pool Explains Message in Last Block Before Bitcoin Halving