メーカーダオ(MakerDAO)のドル連動型ステーブルコイン「ダイ(DAI)」が、ビットコインに連動するステーブルコイン「WBTC」を担保にして発行された。イーサリアムで展開されてきたDeFi(分散型金融)に、ビットコインを取り込もうとする動きが始まっている。
暗号資産(仮想通貨)融資プラットフォームのNexoは5月20日、WBTC(Wrapped Bitcoin)を担保として400万ドル相当のダイ(DAI)を発行した。
WBTC(Wrapped Bitcoin)は、ビットコインを暗号資産カストディアンのBitGoに預け入れることで作成される、ビットコインに連動したERC-20トークン。5月3日にメーカーダオの担保として承認された。
すべての価値をイーサリアムブロックチェーンに引き寄せる
※メーカーダオは、イーサリアム(ETH)をはじめとするERC-20トークンを担保にドル連動型ステーブルコイン「ダイ」を発行できる仕組み。メーカー財団が中心となって運用している。担保にできるERC-20トークンはコミュニティの投票で決まる。
データ提供企業のDeFi Pulseによると、2019年1月にローンチしたWBTCの時価総額は現在、2170万ドル(約23億円)にのぼる。
WBTCを担保にしたダイの発行について、メーカーダオの創業者ルン・クリステンセン(Rune Christensen)氏は次のようにツイートしている。
「これはイーサリアム以外の資産に対する潜在的な需要を示している。ほぼすべての価値をイーサリアムブロックチェーンに引き寄せる経済装置として機能する、DeFi(分散型金融)の広範なトレンドの始まりだ」
イーサリアムとビットコインのウィン・ウィンな関係
イーサリアムブロックチェーンを基盤としたDeFiにとって、ビットコインを取り入れることはサービス拡大、ユーザー層の拡大にむけて重要なステップだ。
そのため、メーカーダオの担保にビットコインを追加することは、以前からコミュニティで議論されていたが、3月12日、イーサリアムが暴落したことを受けて、その声はさらに大きくなった。
メーカーコミュニティでは、ダイの安定性を向上させるために、イーサリアム価格がさらに下落した場合に備えて、ビットコイン、ドル連動型ステーブルコイン、トークン化されたゴールドを担保資産として追加することが検討された。
コミュニティはまずドル連動型ステーブルコインであるUSDコイン(USDC)を担保に追加した。そして、ビットコインの追加は4月上旬、メーカーダオにETH/BTC(イーサリアム/ビットコイン)の価格フィードが追加されたことで示された。
一部のDeFi開発者は、これはイーサリアムとビットコインにとって「ウィン・ウィン」になると考えている。つまり、DeFiユーザーは、ビットコインの流動性を手に入れつつ、イーサリアムのトランザクションスピードを活用することができる。
WBTCを担保にして発行されたダイはさまざまな目的に利用できるとデータサイエンティストのアレックス・スバネビック(Alex Svanevik)氏はMediumの投稿で述べた。例えば、ダイを貸して利子を得るなどだ。
担保に使われたWBTCの発行はトークンセールスプラットフォームのCoinListで行われ、5月11日、Nexoは999.6 WBTCを発行した。その後、5月13日に1WBTC、5月20日に997WBTCがメーカー互換ウォレットのオアシス(Oasis)におそらくテストとして移された。CoinDeskはNexoにコメントを求めたが、返答は得られなかった。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Nexoの共同創業者アントニ・トレンチェフ氏(CoinDesk archives)
原文:Why $4M Dai Made From WBTC Matters for DeFi’s Maturation