中国半導体大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)が、上海証券取引所(SSE)のサイテック・イノベーション・ボード(Sci-Tech Innovation Board)での新規株式公開(IPO)を申請した。同社が既に上場している香港証券取引所(HKEX)に提出した書類で明らかになった。
上海上場で約28億ドル(約3000億円)の資金を調達する計画だ。SMICは、資金の一部を暗号資産(仮想通貨)マイニングに使用される14nm(ナノメートル:10億分の1メートル)チップの生産能力の拡大に充てる。
SMICは2カ月前に、暗号資産マイニング装置メーカー大手のカナン・クリエイティブ(Canaan Creative)との提携を発表したばかり。2社は、比較的市場規模の小さな暗号通貨向けマイニング装置を開発する計画だ。ビットコインマイニング向け装置には現在、技術的な制約があるという。
ビットメインに供給しているTSMC(台湾積体電路製造)や、ワッツマイナー(WhatsMiner)やマイクロBTと連携するサムスンは、SMICの製造能力を上回る。サムスンは8nmチップを量産する意向を今年第1四半期に発表し、TSMCは5nmチップの開発を進める。
アメリカの輸出規制に対応
2000年に中国で設立されたSMICは、中国のチップ製造技術の向上に貢献してきた。米中間の政治的緊張が高まり、アメリカ政府と深いつながりを持つメーカーへの依存度を下げる上で、同社は重要な供給元になる。
中国政府の支援を受けながら、SMICは急ピッチで生産体制の強化を進めている。アメリカがTSMCやサムスンなどの半導体メーカーに対して、中国の通信機器大手ファーウェイへのチップ提供を制限する施策を打ち出して以来、SMICは収益を増やしてきた。
今回上場を検討する上海証券取引所(SSE)のサイテック・イノベーション・ボードは2019年6月にスタートした。新市場は、中国の資本市場改革の一環であり、国内のテクノロジー企業を支援する国家戦略に沿ったものと言われる。
SMICは今年5月、中国の政府系投資ファンドから約22億(約2400億円)の資金を調達している。
米商務省が「外国直接製品ルール(Foreign Direct Product Rule)」規制を拡大するなか、サムスンやTSMCによる中国へのチップ供給を制限されてきた。TSMIは5月にファーウェイへのチップ供給を停止する一方で、アメリカに新工場を立ち上げている。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Shutterstock
原文:Chinese Chip Maker With a Hand in Crypto Mining Plans $2.8B IPO