電力取引所のデジタルグリッド、東芝など5社から7.5億円を調達──AIとブロックチェーンをフル活用

ピアツーピア(P2P)で電力の売買取引ができるプラットフォームを開発するデジタルグリッドは、東芝など5社から7億5000万円を調達した。同社は6月末までにさらに追加の増資を計画しており、事業の拡大を進める。

デジタルグリッドは8日、東芝と八千代エンジニヤリングを含む5社からの資金調達を発表。資金は電力取引プラットフォームの利用拡大における費用に充てる。

デジタルグリッドは、「デジタルグリッド・プラットフォーム(DGP)」と呼ぶ基盤を開発し、民間企業による初の電力市場の創設を進めている。同社はこれまでに、ソニーや三菱UFJリース、東京ガス、住友林業、三菱商事、日立製作所を含む55社から資金を集めてきた。

気候変動対策として、再生可能エネルギーの活用ニーズが高まる中、再エネを利用した電力源の需給調整は難しく、電力システムで活用するためには多くの課題があった。DGPは、再エネ電源などのさまざまな電源と、電力需要を直接P2Pで結びつけることが可能になるという。

再生可能エネルギーを選んで購入できる

画像はデジタルグリッドより

日本では、重油と天然ガス、石炭を主な燃料にする火力発電に加えて、水力発電や原子力発電が、電力需要の基盤部分にあたるベースロードと、需要のピーク時にあたるピークロード需要をカバーしてきた。気候変動の対策が世界的に求められるなか、大口の電力を必要とする大手企業を中心に、再生可能な燃料をベースにした電力に対する需要は高まりつつある。

DGPは電源の識別が可能で、需要家サイドは再エネだけを選んで購入することができるよう設計されている。人工知能(AI)を活用することで、電力の需給調整に必要な煩雑な業務を自動化できる。発電サイドは電気を効率的に売却でき、需要家サイドにとっては電力コストの削減につながる。

また、同プラットフォームは、ブロックチェーンによる電源識別を活用して、独自の再生エネルギーの価値証書「CREV」の売買取引を可能にしている。国が運営する「J-クレジット」やグリーン電力証書などの環境価値とも連携させ、再エネ調達や二酸化炭素の排出量の削減を進める企業に販売する取引スキームを展開している。

文・編集:佐藤茂
写真:(送電線の保守作業・Shutterstock)