ブロックチェーン・アズ・ア・サービス(Blockchain-as-a-Service=BaaS)を展開する米シンバ・チェーン(SIMB Chain)は6月15日、国防総省のサプライチェーンをブロックチェーンで管理するための調査研究が第2フェーズに入ったと発表。新たに2年の調査機関と150万ドル(約1億6000万円)を獲得し、ボーイング社がパートナー企業として参画したことを明らかにした。
シンバのジョエル・ナイディグ(Joel Neidig)CEOによると、同社は空軍のサプライチェーンの中枢にあたるティンカー(Tinker)空軍基地(オクラホマ州)で、ハイパーレジャーファブリック(Hyperledger Fabric)のノードを特にリスク管理に注力して立ち上げる計画だ。空軍の620億ドル(約6兆7000億円)にのぼる部品の調達を管理することが目的だという。
サプライチェーンの中で、機能不全に陥る可能性があるポイントを予測、特定するもので、第2フェーズで空軍はボーイング製の部品の追跡を行う。ナイディグCEOは詳細についてのコメントは避けたが、「本物のデータ」を使用すると強調した。ボーイングの広報担当者はコメントを控えた。
中国製部品を追跡
ナイディグCEOは、空軍が将来シンバ・チェーンを使って追跡できるパーツの例として、中国製コンピューター部品をあげ、「トランジスタ、マイクロプロセッサーなどが考えられ、リスクを緩和する方法や、部品の入手経路を把握する方法を検討している」と述べた。
ナイディグ氏によると、ブロックチェーンが関連するすべての重要データを記録することで、パーツの安全性を確保することができ、空軍の部品調達の専門家たちにとっては重要な役割を果たす。
「軍では、人々がデータを共有する方法、データの来歴、さらに、どこと連携しているかなども検討している。間違いが起こる可能性をすべて考慮しており、そこにブロックチェーンの役割がある」(ナイディグCEO)
DARPAから資金提供
シンバ・チェーンは2017年に、国防高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)から暗号化チャットアプリ向けの開発資金を獲得。軍におけるブロックチェーンの活用に関する調査を行い、空軍や海軍と複数の契約を結んできた。軍では毎日、数十もの国境を超え、数千の部品が動いている。
また、数十億ドル規模の部品ネットワークを安全に追跡しようとする空軍だが、3Dプリンターの導入によって複雑化しているという。米空軍のジェフリー・スレイトン(Jeffrey Slayton)氏によると、3Dプリンターにより、配備先で必要なものを何でも手に入れることができるようになる。
「シンバ・チェーンのブロックチェーンプラットフォームのような新興技術は、すべての参加者が信頼できるわけではないネットワークで、信頼性の高い情報を交換できる可能性を秘めている。アメリカの空軍、宇宙軍、サイバー軍の技術的優位をさらに推し進めることができる」とスレイトン氏はプレスリリースで述べた。
シンバ・チェーンを活用することで、軍はAI(人工知能)や機械学習といった技術の普及がもたらす問題に対して、事前に対処することが可能になるという。データが本物であれば、大量のデータからさまざまな分析を可能にするAIや機械学習に加えて、ブロックチェーンが生かされると、ナイディグ氏は言う。
「AIにデータを送る前に、信頼できるトランザクションの優れた基盤が必要だ」
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Greg L. Davis/U.S. Air Force
原文:US Air Force Gives Blockchain Firm $1.5M to Build Supply Chain Network