フィンテック大手のペイパル(PayPal)は、同社の3億2500万ユーザーを対象に、暗号資産(仮想通貨)を直接売買できる機能を開始する準備を進めている。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。
現在、ペイパルのサービスはコインベース(Coinbase)などの取引所からお金を引き出す手段として利用できる。今回の取り組みでは、暗号資産を直接販売することを目指しているようだ。
「私の理解では、ペイパルとその傘下のVenmo(ベンモ)で、直接、暗号資産を売買できるようにしている。ある種のビルトインウォレット機能を作り、そこに暗号資産を保管できるようにするのだろう」(関係者)
サービス開始は3か月以内か
利用できる暗号資産の種類や数は不明。ペイパルは「流動性を確保するために複数の取引所と協力しているだろう」と同氏は語った。
他の関係者は、ペイパルが暗号資産の売買機能の提供を検討していることを認め、サービスは「3カ月以内、おそらくまもなく」スタートするだろうと述べた。
ペイパルはこの計画についてコメントを控えた。
関係者らによると、サンフランシスコに拠点を置く暗号通貨取引所のコインベース(Coinbase)と、ルクセンブルグに拠点を置くビットスタンプ(Bitstamp)が最大の競合となる可能性が高いという。
Coindeskは両社に取材したが、コインベースもビットスタンプもコメントを控えた。
コインベースは2018年、アメリカの顧客に対して、ペイパルでの法定通貨での即時引き出し機能をスタート。翌年にはヨーロッパとカナダの顧客に対して、同様の機能を提供した。
フィンテックアプリの暗号資産販売
暗号通貨を販売するフィンテックアプリは業績を上げている。
ツイッター(Twitter)のジャック・ドーシーCEOが立ち上げた決済企業スクエア(Square)は、2018年半ばに決済アプリ「Cash App」でのビットコイン販売を開始。直近の決算報告によると、Cash Appのビットコイン売上高は3億600万ドル(約330億円弱)にのぼる。
ロンドンに拠点を置くRevolutは、2017年のビットスタンプとの提携を期に暗号資産の販売をスタートさせた。2020年2月に5億ドルの資金調達を行い、企業評価額は55億ドルとなった。
アメリカの若い世代を中心に人気を集めてきた株取引アプリのRobinhoodは、2018年2月に暗号資産取引機能を始めている。
暗号資産は、フィンテックアプリのユーザー数を増やし、新たな収益源を生み出すための明確な手段と考えられるようになっている。ペイパルのダン・シュルマン(Dan Sxhulman)CEOは、5200万以上の口座を有するベンモの積極的な収益化を図ることを明らかにしている。
ブロックチェーンに力を入れるPayPal
今年、ペイパルは新たに「Blockchain Research Group」を立ち上げるための求人情報を掲載。サンノゼに4人、シンガポールに4人、計8人の技術職を募集した。
2019年、当初はフェイスブックが主導するデジタル通貨「リブラ」プロジェクトへの参加を表明したが、短期間で離脱。現在、自社の決済サービスの強化に焦点を当てていると関係者の1人は付け加えた。
今年はじめのCoinDeskのインタビューで、ペイパルの最高技術責任者スリ・シバナンダ(Sri Shivananda)氏は、ペイパルは独自の「(ブロックチェーン)技術自体についての視点と見解を持ち、誰にでもサービスを提供できるオープンなデジタル決済プラットフォームを作るというコンセプトを、どう具現化できるかを考えている」と語った。
同氏は、ペイパルの具体的な計画についてはコメントできないと述べた。
「我々はブロックチェーンの可能性を強く信じている。通貨のデジタル化は、時間の問題でしかない」
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Shutterstock
原文:PayPal, Venmo to Roll Out Crypto Buying and Selling: Sources