伝統的なコモディティの取引と投資を行ってきたシカゴのヘマイヤー・トレーディング(Hehmeyer Trading + Investments)は、2017年に暗号資産(仮想通貨)を中心とするデジタル資産の関連サービスを開始した。事業の多様化を始めて3年が経った今、同社は完全に暗号資産へとシフトし、社名もヘマイヤー(Hehmeyer)に変えた。
これまで続けてきたコモディティの仲介サービスや投資顧問業務は行わない。創業者兼最高経営責任者のクリス・ヘマイヤー(Chris Hehmeyer)氏は、暗号資産とブロックチェーンは過去に例のない商品を生み出すことができると話す。同氏が新事業領域で注目するのは、「DeFi(分散型金融)」だ。
コモディティ業界で長年活躍してきたヘマイヤー氏にとって、中間業者を排除できる可能性こそが大きな魅力だという。
中間事業者を排除した自由な取引
「人々が中間業者の負担から解放され、他の人々と自由にやり取りする世界を見てみたい」とへマイヤー氏は言う。「これからの社会では、人は自身の生活や資産を自由にコントロールできるようになるだろう。公平さが生まれ、人は交流する能力を高めていく。私はそれを交流の解放と呼ぶ。そして、中間業者を使う必要性から自由になる世界がやってくるだろう」
へマイヤー社は現在、取引サービスのみを行っているが、今後複数の事業モデルを検討していくという。
「(デジタル資産市場において)必要になってくるのは単なる取引ではないだろう。例えば、マーケットメーカーの必要性は増してくる。マーケットメーカーはゲームに留まることができ、排除されることはない」
マーケットメーカーとは:市場で大規模な売買を行う市場参加者。市場の流動性を確保するためにはマーケットメーカーの存在が不可欠。主に機関投資家を意味する。
可能性は個人投資家に
「私にはカストディ(資産の保管・管理)事業とプライムブローカー事業がこの分野の動きに最も対応できるように見える。プライムブローカーのタゴミ(Tagomi)は巨額で買収され、カストディ事業者は顧客の資産を集めている」
プライムブローカー:機関投資家向けに取引の代行など、必要なサービスを総合的に提供する金融事業者。
ヘマイヤー氏は暗号資産分野はまだインフラ構築の段階にあると話す。フィデリティ・デジタル・アセッツのような企業が参入し、中央銀行はデジタル通貨の発行を検討しているが、それは大きな変化の序章に過ぎない。
機関投資家の参入には時間がかかる。より多くのサービスが生まれていけば、新たな市場形成のスピードは増していく。機関投資家や大口投資家の参入において重要なカギを握るペイパルやフィデリティは、既に新しい市場に対応しようと積極的に動いていると、へマイヤー氏。
「暗号資産分野のダイナミックな部分は、個人投資家に対する潜在的利益だと考えている。人が出会い、スマートコントラクトや商品を作り、ピアツーピアの取引や決済を行うことができるようになる。テクノロジーがこれを可能にしている。以前は不可能だったことを誰もが簡単にできるようになる。その一部を担うということは、我々のミッションだと思っている」
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:クリス・ヘマイヤー氏(本人提供)
原文:Veteran Commodities Trader Chris Hehmeyer Goes All In on Crypto