イーサリアム上で急拡大する暗号資産、1日の決済額はビットコインを超える

イーサリアム(ETH)の市場規模(時価総額)は現在、約260億ドル(約2兆8000億円)と言われるが、これにはイーサリアムブロックチェーンに構築されたすべてのデジタル資産は含まれない。

例えば、年初から注目を集めている暗号資産(仮想通貨)には、テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)といった米ドルに連動するステーブルコインや、Crypto.comのCROやチェーンリンク(Chainlink)のLINK、コンパウンド(Compound)のCOMP、カイバー(Kyber)のKNCといったアルトコインがあるが、いずれも260億ドルにはカウントされていない。

暗号資産データのメッサーリ(Messari)によると、「ERC-20トークン(ERC-20規格に準拠し、イーサリアムネットワークで発行される暗号資産)」の時価総額は約260億ドル。つまり、イーサリアムのエコシステム全体ではトークンの時価総額(ETH+ERC-20トークン)は500億ドルを超える。

ビットコインの値動きが鈍る一方で、ステーブルコインの堅調な需要と分散型金融(DeFi)市場の成長は、イーサリアムブロックチェーンの価値向上を促す結果となった。

「DeFiトークンは強気相場が続く」と暗号資産分析企業トレードブロック(TradeBlock)は7月20日付のレポートで述べる。

1日あたりの決済額がビットコインを超えたイーサリアムブロックチェーン

イーサリアムブロックチェーンとビットコインブロックチェーンの1日あたりの決済額(青:イーサリアム、橙:ビットコイン)
出典:Messari

メッサーリは、イーサリアムブロックチェーンの1日あたりの決済額が約25億ドルに増加し、少なくとも2019年はじめ以来、初めてビットコインを上回ったとレポートで述べた。「イーサリアムはビットコインを抜いた。イーサリアム上の経済活動はさらに拡大していくだろう」(同レポート)

ビットコインはこの数週間、狭いレンジでの値動きを続ける。一方、イーサリアムの価格は年初から81%上昇し、250ドルに迫る。

暗号資産取引企業「ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)」のスティーブ・エールリッヒ(Steve Ehrlich)CEOによると、ボイジャーにおけるビットコインの取引量は現時点で総取引量の15%を占めるが、5月の半減期前(ビットコインのマイニング報酬が半減したこと)の約60%から大幅に減少している。

年末までに500ドルに達するか

暗号資産業界の外での知名度と人気は、依然としてビットコインが圧倒的だ。取引プラットフォームのイートロ(eToro)とデータプロバイダーのザ・タイ(The TIE)が発表したレポートによると、暗号資産の専門メディアを除くメディアが6月に報じたニュースで、DeFiに関する記事はわずか4件。ビットコインは200件にのぼった。

調査企業「クオンタム・エコノミクス(Quantum Economics)」の創業者マティ・グリーンスパン(Mati Greenspan)氏は、「2020年のDeFi市場の拡大は加熱しすぎているとの認識が高まっている」と顧客向けレポートで述べる。

一方、ロンドンのデジタル資産企業「Bequant」のリサーチ責任者、デニス・ビノコウロフ(Denis Vinokourov)氏は、イーサリアムのリスクは、ブロックチェーン上のトークン取引が活発化し、トランザクション手数料を押し上げていることだと指摘する。

台湾に拠点を置くクロノス・リサーチ(Kronos Research)のジャック・タン(Jack Tan)氏は、2020年末までにイーサリアム価格は500ドルに達するだろうと話す。タン氏の予想が正しければ、イーサリアムの市場規模は2倍以上になり、ERC-20トークンの価値はさらに上昇する。

ビットコインの時価総額は現在、約1700億ドルである。

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Messari
原文:First Mover: Bitcoin Shows Signs of Life but Ether (and Crew) Steal the Limelight