三菱UFJ銀、AIで3億ページ超の印鑑票をデジタル化──米Ripcordの技術活用

三菱UFJ銀行は、印鑑票などの紙書類の電子化・デジタル化することを目的に、アメリカのスタートアップRipcordが開発するロボット・AI 技術を基盤としたサービスを導入する。

7月22日の発表によると、同行は3 億ページ以上の紙の印鑑票(関連書類含む)を倉庫に保管しており、内容確認の際、取引によっては顧客が持参する必要が生じるなど非効率だったという。こうした課題を解消することが目的で、2021年から保管する印鑑票のすべてを電子化する考えだ。

Ripcordとは──“ウォズ”も支援したスタートアップ

Ripcordは、ロボットやAIを活用して、紙の文書のデジタル化などを支援するスタートアップ。Appleの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏やGoogle Ventures(当時)が支援している。

同社のロボットの特徴は、紙媒体の記録をスキャンし、インデックスをつけ、カテゴリー分けができ、クラウドでの検索が可能。既存の IT システムにも統合できる。また書類についたホチキスを自動で外す機能もあるという。

紙書類は遠隔地の倉庫に保管

銀行取引では、申込書や契約書などの紙書類を使うのが一般的。取引の内容などによっては、書類の内容や筆跡などを確認する必要があるため、三菱UFJ銀行も多くの紙書類を遠隔地に所在する倉庫に保管している。

個別に印鑑票を確認する際に、専用端末で参照できる内容や場所が限られているため、取引によっては、顧客が確認のために同行に持参しなければいけないことがあるという。

印鑑票は、顧客の届出印影、口座番号、氏名および住所などの情報を記載した書類。本人確認などの際に利用される。

金融機関でも進むDX、過去に取得した書類もデジタル化へ

企業にとってデジタル化、デジタルトランスフォーメーションは重要な経営課題となっている。これは金融機関も同様で、本人確認をオンラインで完結させるeKYCを導入したり、印鑑を不要にしたりしている。三菱UFJ銀は印鑑が不要な「印鑑レス口座」というサービスを持っているし、三井住友銀行ではサインのみで本人確認できる「サイン認証」を導入している。

しかし、これまでに開設された口座については印鑑票が提出されており、こうした書類のデジタル化も、コストを削減した効率的な経営を実現する上で重要な課題といえる。

中期経営計画でデジタライゼーションを最重要施策の一つに挙げている同行は、Ripcordのサービス導入の背景について、「ITの活用により紙書類を電子化することで、紙書類を前提とせず、場所の制約を受けないロケーションフリーの業務環境の確立」を目指すとしている。

文・編集:濱田 優
画像:Ripcord プレスキットより