日本銀行の雨宮正佳副総裁は7月29日、日本記者クラブで講演し、中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、「将来必要になった時に的確に対応できるように準備する観点から、一段ギアをあげて検討を進めていく必要があると考えています」と述べ、CBDCの検討により注力する方針を明らかにした。
講演は「最近の金融経済情勢と金融政策運営」と題して行われた。コロナウイルスの影響を受ける中での内外の金融経済情勢、リーマン・ショック時との違い、日本銀行の金融政策運営などについて話した。
日銀としてデジタル社会にふさわしい決済システムを考える必要がある
CBDCについては、コロナ禍でキャッシュレス化・決済のデジタル化への関心が高まっているという文脈で言及。決済システムの面でもイノベーションが進む可能性があるとして、「日本銀行としても、デジタル社会にふさわしい決済システムのあり方をしっかりと考える必要があります。この点に関して、中央銀行が発行するいわゆる『中銀デジタル通貨』も重要な検討課題の一つ」と述べた。
現時点では日銀が中銀デジタル通貨を発行する計画はないと明言しながら、「技術動向などの環境変化は、非常に速いものがありますので、将来必要になった時に的確に対応できるように準備する観点から、一段ギアをあげて検討を進めていく必要があると考えています」と話した。
また日銀が7月20日に設置した「デジタル通貨グループ」にも触れた。ここでは実証実験などを通して、中銀デジタル通貨の機能特性や技術面からみた実現可能性について理解を深めるとともに、海外の中銀や内外の関係機関と連携し、CBDCの検討をすると紹介した。
文・編集:濱田 優
画像:Shutterstock.com