ビットコイン(BTC)支持者が国家が独占する通貨発行に挑戦する上で、分散型の世界を構築する必要があることはより明白になってきている。この考えは暗号資産(仮想通貨)に新たな投資家を引きつけ、イーサリアム(ETH)でも同じことが起きていると言えそうだ。
イーサリアムの価格上昇は先週、ビットコインを上回った。コインメトリクス(Coin Metrics)によると、イーサリアムは7月24日〜31日にかけて23.7%上昇した。一方、ビットコインの上げ幅は18.7%。イーサリアムの人気はブロックチェーン上に構築される金融サービス「DeFi(分散型金融)」が牽引している。
先週、DeFiに預け入れられた資産(TVL:total value locked)は40億ドルに近づいた。イーサリアムや他の暗号資産の保有者が、「流動性報酬」(預け入れ資産に対する金利に相当)を求めて、DeFi融資サービスが発行するトークンを手に入れようとしたためだ。
特にYearn.Financeが発行したトークン「YFI」が多くの資産を集めた。その影響を受けて、DeFiに用いられる代表的なステーブルコイン「ダイ(DAI)」の供給量は著しく増加した。
こうした動きはYearn.Financeだけではない。Compound Labsのトークン「COMP」と、11秒で500万ドル(5億円以上)を集めたとされるトークン「AMPL」は、どちらも似たような仕組みを持っている。
分散型金融(DeFi)はこれからどう発展していくべきだろうか?これまで多くのフィンテック企業が融資のサービスを始めたが、その多くは失敗に終わった。
皮肉にも、イーサリアムブロックチェーンにおけるトランザクションは急増し、その手数料は高騰している。大きな要因は法定通貨・米ドルに連動するステーブルコイン「テザー(USDT)」の拡大だ。テザーの発行額は29日、110億ドル(約1兆2000億円)を超えた。
依然として強い中央集権型サービス
DeFiの成長は印象的だが、この市場で中央集権的なプロジェクトはその強さをさらに発揮している。テザーの需要の増加はその一例と言えるだろう。
暗号資産デリバティブ分析会社スキュー(Skew)によると、世界で最も流動性の高いビットコイン先物市場の一つ、OKExでのベーシス(現物価格と先物価格の差)は先週20%に達した。
融資サービスNexoでのテザーの借入金利は6〜10%。ビットコインの裁定取引(現物と先物の価格差を利用する取引)の資金としてテザーを借り入れることは低リスクの優れた投資手段と言える。
テザーの発行元iFinexのような中央集権型サービスは、投機的な市場を加熱する。これまでのところ、暗号資産業界で最も評価されているサービスは、バイナンス(Binance)やビットメックス(BitMEX)のような中央集権型のオフショア取引所だ。
革新的なサービスは暗号資産業界に新たな市場構造を作り上げ、高ボラティリティ・高リスクの投資を妨げていた資本と地理的な障壁を取り除いた。それは、資産運用業界で、ミレニアム世代から爆発的人気を集めた株取引アプリのロビンフッド(Robinhood)がやってのけたことに似ているのかもしれない。
分散型取引所はマーケティングか?
現在、バイナンスのDEXは最も成功していると言えるが、旗艦サービスである中央集権型取引所は、規模と成長率の両方でDEXを上回る。
DEXを展開することはマーケティング的には良いことだろう。仮に、株式市場がますますボラティリティの点で暗号資産市場に類似するようになれば、DEXの戦略的な重要性が証明されるかもしれない。
今のところ、暗号資産は未開拓の市場だ。将来的にはトレーダーはより長期的な視点を持つかもしれない。ビットコインは、政府の干渉やインフレの影響を受けない。DEXは取引と投機において、同じことを提供している。
現在、より成功した、中央集権的サービスを持たない分散型サービスを見つけることは難しい。DEXの構築は、規制当局から既存の暗号資産市場を守るための防衛的な動きではなく、将来のさらに荒涼とした規制の少ない市場に備えるための攻撃的な動きかもしれない。
今後の展開は?
これが未来なのか? ツイッターで誰かが言うように、DEXのUniswapに資金を移すべきなのか?それとも、ゴールドマン・サックスが言うように、ゴールドに投資すべきだろうか?
ドル指数(DXY:複数の主要通貨に対する米ドルの価値を示したもの)は2年ぶりの安値となった。少なくともFRB(連邦準備制度理事会)は何があっても利上げの意向を示すことはないだろう。
先週の各資産のリターンは以下の通り。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Nomics
原文:Crypto Long & Short: Does Decentralization Create Value or Destroy It?