「テザー(USDT)」や「USDC」などの米ドル連動型ステーブルコインは、1コイン1ドルの価値を表すことになっている。しかし、その価格はDeFi(分散型金融)プラットフォームでしばしば変動する。
トレーダーは、この未成熟で取引高の少ない市場を利用して、短時間で多くの利益をあげる戦略を考え出した。
8月10日、あるトレーダーは分散型取引所のユニスワップ(Uniswap)、カーブ(Curve)、dYdXを利用して、テザー(USDT)とUSDCを立て続けに取引し、4万5000ドル(約480万円)の初期投資から4万ドル(約430万円)の利益をあげたという。わずか数分で89%の利益をあげたことになる。
取引の経緯は、イーサリアムブロックチェーンのデータを確認できるウェブサイト「Etherscan」で見ることができる。
取引の経緯
取引の経緯を説明しよう。
1. トレーダーは4万5000ドル相当のUSDCを使って取引を開始。dYdXでさらに40万5000ドルを借り、合計45万ドルのUSDCを手に入れた。
2. ステーブルコインの額面価格1ドルと市場価格の一時的なズレを利用して、ユニスワップで45万ドルのUSDCを49万2000ドルのUSDTに交換。
3. カーブでUSDTをUSDCに交換。
4. dYdXで借りた40万5000ドルのローンを返済すると、手元には8万7000ドル相当のUSDCが残った。
5. これらの取引にかかった手数料は約2000ドル。
6. 最終的に4万5000ドルの初期投資で8万5000ドルを手に入れ、4万ドルの利益をあげた。
裁定取引の“2020年バージョン”
この取引は、8月11日にツイッターで驚き(と、おそらく称賛)を集めた。
一見するとこの戦略は、ハッカーが6月に流動性プロバイダーのバランサー(Balancer)から50万ドルを引き出したことと同様に、十分に検証されていないDeFiシステムを「悪用」したようにも思える。
しかし、この取引は単にウォール街や暗号資産市場で毎日行われている、古典的な裁定取引(アービトラージ)戦略の“2020年バージョン”と言えるのではないだろうか。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Etherscan, CoinDesk
原文:First Mover: How a DeFi Trader Made an 89% Profit in Minutes Slinging Stablecoins