GMO-PGが利益10倍を実現できた理由──オンライン決済の覇者が見据える次の成長の源泉

過去10年で営業利益を10倍に増やし、国内のオンライン決済サービスで注目を集めてきた企業が東京・渋谷にある。GMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)だ。

あらゆるモノとサービスの売買がオンライン化され、国内のEコマース市場(B-to-C)が毎年1兆円ペースで拡大を続けるなか、GMO-PGは人と企業をクレジットカードやQRコード決済などで繋げるゲートウェイ事業で収益と企業価値を拡大してきた。

当然、成長が期待されてきたオンライン決済代行ビジネスゆえに、この業界における競争は激しい。GMO-PGが同業界トップのポジションを維持するために図ってきた戦略は何か?

GMO-PGの企業価値創造戦略統括本部で、経営企画・新領域創造部長を務める中山悠介氏に話を聞いた。

営業利益100億円、株価は5年で10倍

「単にオンライン決済代行システムを売るだけというものではない」(GMO-PG・中山悠介氏)

GMO-PGの収益と企業価値(時価総額)の推移をグラフにすると、右肩上がりのきれいな曲線を描く。年間の営業利益は2010年からの5年で約3倍に増やし、2015年には約30億円。その後の5年でさらに3倍以上に拡大させ、今年は100億円の大台に乗る勢いだ。

株価は過去5年で10倍。2015年には1000円近辺で推移していたGMO-PG株は、新型コロナウイルスで世界経済が失速する今年5月には、10000円を超えた。

各業界の顧客企業に決済のデジタル化を提案する際、その企業の業務プロセスを理解していなければ、それぞれの顧客企業に合った決済システムの実装を提案することはできない。GMO-PGはこれまで、各業界のトッププレイヤーの業務プロセスを把握し、その企業に合ったオンライン決済システムの実装提案を強みとしてきたと、中山氏は話す。

エンジニア・ドリブン、提案型営業

電子マネー、スマホ決済アプリ、クレジットカード。コンビニエンスストアの窓ガラスに貼られた多種多様の支払い方法。(写真:Shutterstock)

「エンジニアの数が多いのもGMO-PGの特徴。営業担当はエンジニアマインドで顧客に提案する。あらゆる業界で経験を積んだ人材が豊富にいるからこそ、業界・企業に合った提案型営業ができている。単に決済代行システムを売るだけというものではない」(中山氏)

GMO-PGの収益構造はどうなっているのか。2019年10月~2020年6月の第3四半期には、241億円の売上収益(売上高にあたる)に対して約78億円の営業利益を計上した。利益率は30%を超えており、年間約30兆円を売り上げ、2兆4000億円の営業利益を稼ぐトヨタ自動車の利益率8%と単純に比較すると、GMO-PGの利益率の高さがわかる。

売上収益の一番太い柱は、開発した決済システムを導入した加盟店の決済処理量から得られる手数料収入で、全体の約75%を占める。GMO-PGは、処理件数に応じた売上を「フィー」、処理金額に応じた売上を「スプレッド」と呼んでいる。

決済のオンライン化を進める企業にたいして、GMO-PGはその企業の業務プロセス全体を理解した上で、決済代行システムを業務プロセスにピタリとはめ込んでいく。結局、決済プロセスは企業ごとに異なるものになってくると中山氏は話す。

GMO PGが狙う3つの領域

サンフランシスコにある「Amazon Go」の店舗。レジに並ばず商品を購入することができる。(写真:Shutterstock)

GMO-PGが次の成長の源泉として注目している領域はどんなところだろうか。中山氏は国内の3つの大きな潮流をあげる。

一つ目は、客との対面と非対面ビジネスを統合する決済システムだ。日本のキャッシュレス化は急ピッチで進んでいるが、QRコードや電子マネーなどの多くの決済手段がすでに普及しているため、決済プロセスはより複雑になってきている。

店舗の決済端末や、Eコマースサイトから始まるキャッシュレス決済のプロセスで、事業者が必要とする全ての機能を完結する新たな決済プラットフォームは今後さらに必要になってくる。GMO-PGは2019年に、三井住友カードとVISAと共同で次世代決済プラットフォーム「stera」を開発した。今後、steraがどれだけ国内のキャッシュレス決済の裏側で使われていくのか注目を集める。

二つ目に、中山氏は拡大するB-to-BのEC市場をあげる。この市場規模は2019年に前年から10兆円拡大して、353兆円となった。EC化率は31.7%まで上昇し、企業間のデジタル取引が速いペースで進んできているのがわかる。ちなみに、B-to-CのEC市場規模は過去5年で年率5%以上で拡大を続け、2019年は19兆3600億円(経済産業省のデータ)。

三つ目は、銀行、電気・ガス、流通、不動産などのあらゆる業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。企業がデジタル化、オンライン化、EC化する上で、決済プロセスを含む企業のお金にまつわる業務はデジタル化していく。

「今後3~5年、デジタルトランスフォームする企業の心臓部であるデジタル決済システムを作り上げる機会はさらに増えていくだろう」と中山氏。「(GMO-PGは)これまでも決して敵なしというわけではなかった。顧客企業や規制環境などの変化に素早く対応できるフラットな組織構造が、より重要になってくるのではないだろうか」

取材・文:佐藤茂
写真:GMO PG