ツイッター創業者兼CEOのジャック・ドーシーが率いるモバイル決済サービスのスクエア(Square)が、コロナ禍で株式市場の注目を集めている。同社が開発したアプリがユーザー数と収益を伸ばし、株価は年初から3倍になろうとしている。
アメリカではペイパルの送金アプリ「Venmo」が大学生や若い世代に人気だが、「Cash App」アプリは今年、スクエアの収益拡大に貢献している。Cash Appはスマートフォンで友達に送金することができたり、プリペイド・デビットカードと併用してキャッシュレスに買い物もできる。一部の個別銘柄株の投資や暗号資産「ビットコイン」の購入も可能だ。
新型コロナウイルスのパンデミックで、アメリカでも日本同様に、景気刺激策の一環としての給付品が支払われたり、失業給付金を受け取る人の数が急増している。その給付品を受け取るのに、Cash Appを利用するケースが増えているという。
収益の増加は40%ペースから60%超
スクエアがまとめた直近の株主報告書によると、今年第2四半期(4月~6月)の純収益は前年同期比で64%増え、19億2000万ドル(約2040億円)。1月~3月期の増加率は44%で、2019年も各四半期ともに約40%のペースで収益を増やしてきたが、スクエアは第2半期に収益の伸び率を一気に伸ばした格好だ。
株価は、年初に60ドル近辺を推移していたが、9月に入ると160ドルを突破した。時価総額はおよそ720億ドル(7兆6700億円)で、「ユニクロ」のファースリテイリング(約7兆円)を上回る。
スクエアの第2四半期の粗利益は5億9700万ドル(約640億円)。Cash Appがその約半分の2億8100万ドルを稼いだ。Cash Appのユーザーが著しく増え、6月にはマンスリーアクティブユーザー(トランザクションを実際に行っているMAU)が3000万人を超えたと報告している。
Cash Appの成長は持続可能か?
また、Cash Appのアクティブユーザーは今年4月~6月期に、月に平均15回以上同アプリを利用した。この数値は前年同期と比べると、約50%の増加となったという(同報告書)。コロナ緊急対策としての国の給付金と、失業給付金の受け取り手段として、CashAppが同四半期に広く利用されたと説明する。
一方、コロナが人と経済の活動を抑制するなか、多くの中小企業や小売店舗、レストランが事業を休止する状況は続く。スクエアの小規模事業ビジネス部門にとっては、苦戦を強いられる状況でもある。
スクエアは今後、Cash Appを利用する個人ユーザーの取引をどこまで拡大できるのだろうか。CashAppの機能をさらに増やして、いかにユーザビリティを向上させるのか。スクエアの中期的・成長戦略に注目が集まりそうだ。
文:佐藤茂
写真:ジャック・ドーシー氏(Shutterstock)