1時間に約1500億円──中銀の緩和策はいつまで続く

1時間に14億ドル(約1480億円)。

バンク・オブ・アメリカによると、新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)が3月にスタートして以来、世界中の中央銀行はこのペースで資産を買い続けている。そして、偶然かどうかはわからないが、テクノロジー株の指標とされるナスダック100指数の時価総額もほぼ同じ時期から上昇している。

これは、FRB(連邦準備制度理事会)によるドルの増刷がその価値を低下させ、インフレを招くという考え方を持つ熱烈なビットコイナーが喜びそうな数字だ。

だが、このような見方が伝統的な金融システムと、ドルを基盤とした経済の中心に位置するウォール街の銀行のリサーチャーによるものだとしたら、違和感を感じるだろう。

「この10年間の大半において、ウォール街は『大きすぎて潰せない』ことを証明しており、通貨政策は暗黙的に経済成長を促進するために資産価格を支えてきた」とバンク・オブ・アメリカのチーフ・インベストメント・ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏はレポートで述べた。

「2020年、通貨政策はより明示的に資産価格のオーバーシュート(行き過ぎ)を作り出している」

膨らみ続けるFRBのバランスシート

これがFRBが今週開催する2日間にわたる非公開会議の背景だ。会議では高官たちが、FRBの107年の歴史において、おそらく最も緩和的な通貨政策を評価する。

金利はすでにゼロ近くまで切り下げられ、FRBは市場を下支えするために国債をひと月に800億ドル(約8兆5000億円)購入している。さらに緊急貸付プログラムを通じて、数兆ドルの資金も用意されている。

FRBはジェローム・パウエル議長が先月説明した計画──金利をすぐに引き上げることなく、年率2%超のインフレを目指す──をおそらく正式なものにする以外に大きな発表はないだろう。FRBのバランスシートは今年すでに約3兆ドル増加し、先週時点で7兆1000億ドル(約750兆円)まで膨らんでいる。

FRBのバランスシート
出典 : Federal Reserve Bank of St. Louis

一つの可能性としては、市場が再び急落するまで、FRBは新たな経済刺激策の発表を控えるということが考えられる。

アメリカの失業率は今年2倍以上の8.4%になったにもかかわらず、S&P500株価指数は前年比で依然として3.4%上昇しており、FRBは株価の下落を望んでいないのではないかとの憶測が広まっている。

今は最悪の危機か?

「市場は、FRBの存在にあまりに依存するようになってしまった」と債券格付け会社フィッチ(Fitch)のチーフエコノミスト、ブライアン・コールトン氏は述べる。

消費者心理はここ数カ月間、落ち込んでいるが、2008年の金融危機の後ほどではない。だがほとんどのエコノミストは、現在の危機の方がずっと悪いと話している。

ミシガン大学の消費者心理調査より
出典 : Federal Reserve Bank of St. Louis

2008年の第4四半期と同じように、株式市場が23%下落したら、消費者がどれほど支出を控えるかを想像して欲しい。経済学には、資産価値が上がると、収入に変化がなくても消費者が支出を増やす「資産効果」と呼ばれる考え方がある。その逆もまた真実だ。

これはどれだけ株価が下落すればFRBが介入するのかを測るための「専門用語」だと、調査会社TSロンバード(T.S. Lombard)のチーフエコノミスト、スティーブ・ブリッツ氏は述べる。

「通常のボラティリティ(価格変動)ではFRBは介入しない。見通しに脅威を与えるような株式市場の動きと判断した時に介入する」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Unsplash(CoinDeskが加工)
原文:As Central Banks Print $1.4B an Hour, Bitcoiners Bet on Federal Reserve ‘Capture’