イーサリアムの生みの親、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏がCoinDesk主催のオンラインカンファレンス「invest: ethereum economy」の基調講演に登壇。
取引手数料が高騰するなか、イーサリアムブロックチェーンの演算能力への負荷をチェーン外に移し、取引データはチェーン上に保つ「ロールアップ」など、いわゆるレイヤー2スケーリングソリューション(拡張性の問題を解決する手段)への移行をユーザーに訴えた。
イーサリアムブロックチェーンのベースレイヤーを「シャーディング」と呼ばれる技術(承認作業を並行して行う技術)を使ってスケーリングさせるにはまだ数年かかることを考えると、ユーザーがロールアップを利用することは必要不可欠とブテリン氏は述べた。
「取引所、ウォレット事業者、マイニングプール、大口ユーザー、あるいは普通のユーザーであっても、この講演を聞いているなら、ロールアップとは何か、その機能、そしてなによりもロールアップに移行するための自分の戦略を理解するべきだ」
取引能力は毎秒15件から最大4000件に
イーサリアムブロックチェーン上で運営されるDeFi(分散型金融)プラットフォームの急激な増加によって、ここ数カ月で取引手数料は高騰。年初の8セント(約8円)から9月には約14ドル(約1500円)に達した。一方、ポルカドット(Polkadot)やコスモス(Cosmos)、ブロックスタック(Blockstack)などの競合のブロックチェーンも台頭している。
ブテリン氏は「オプティミスティック・ロールアップ」と、ゼロ知識証明を使う「ZKロールアップ」の双方を称賛し、現行のイーサリアムブロックチェーンでこれらのソリューションを使えば、取引能力を毎秒約15件から1000〜4000件に増加させることができると付け加えた。
「現在の状況について言えば、シンプルな決済はすでに実現している。つまり、ロールアップ内でイーサリアムの取引を行うことができる。課題は実際にユーザーを移行させること」
PoSへの移行時期は明言せず
イーサリアムのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)から、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行時期については、実証を含むフェーズ0は「まもなく」と述べた以外は詳しく述べなかった。
PoWとPoS:ブロックチェーンのトランザクション(取引)を承認し、ブロックチェーンを支える基本的な仕組み。PoWは検証・承認などの作業に対して報酬を支払う。一方、PoSはネイティブ通貨(この場合は、イーサリアム)を保有していることに対して報酬を支払う。
PoSについてブテリン氏は、ステーキングする人たちは少なくとも50〜60%の時間、オンラインに留まれば純利益を期待できると述べた。
「12時間オフラインだったら切り捨てられると言っているようなPoSチェーンもあるが、本当に馬鹿げていると思う」
ブテリン氏によると、より多くのイーサリアムがステーキングされれば、より多くのリソースと複雑性が期待できるという。なぜなら、1万イーサリアムをステーキングする人は、32イーサリアムをステーキングする人よりもチェーンに対してより多く貢献し、利益を得ることになるからだ。
「これはシャーディングの機能の当然な結果で、我々が特に気に入っている特徴だ。イーサリアム2.0は普通のユーザーに最大限フレンドリーになることを目指している」
イーサリアムの供給量は減少?
ブテリン氏はまた、ブロックサイズの上限を見直すことで、新たな取引手数料モデルを検討する提案「EIP 1559」にも熱意を示し、手数料の変動は小さくなるだろうと述べた。
手数料は破壊、つまり「焼却」されるため、手数料として焼却されるイーサリアムの数は、ステーキングする人たちに対して発行される数を上回る可能性が非常に高い」という。
さらに時間とともに供給量が減少していくビットコインとイーサリアムを比較して、「(取引手数料が高騰した)最近の3カ月が新しい日常だとすれば、PoS移行後、イーサリアムの供給量は減少していく」とブテリン氏は述べた。
「我々のまわりで今流行っているジョークを紹介しよう。供給量が固定された通貨(ビットコイン)が堅実な(sound:音速)通貨なら、供給量が減少する暗号資産(イーサリアム)はそれを上回る(supersonic:超音速)通貨だ」
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:DEVCON 2018でのヴィタリック・ブテリン氏(イーサリアム)
原文:Ethereum’s Vitalik Buterin Calls on Power Users to Move to Layer 2 Scaling