クリスマスシーズン前にコロナ第3波、ワクチン報道でも米経済に懸念──ビットコイン市場はどう動く

ビットコインは先週末に1万6000ドル（約167万円）を割った後、11月16日には再び上昇、その水準を超えた。

「1万6490ドルを再び超えれば、強気筋が市場を捉えて価格を1万7000ドルまで上昇させ、1万6490ドルを超えなければ、再び保ち合いとなるだろう」と暗号資産（仮想通貨）金融会社、デジネックス（Diginex）のマット・ブロム（Matt Blom）氏は顧客宛てのメールで述べた。

アメリカの新興製薬会社モデルナ（Moderna）が、開発中の新型コロナウイルスワクチンが初期分析で95%の有効性を確認したと発表したことをうけて、ニューヨーク株式市場ダウ平均株価は16日に3万ドルに迫り、終値は9カ月ぶりの高値2万9950ドル44セントとなった。

高まる第3波への懸念

ワクチンの開発と普及は新型コロナウイルス感染拡大の第3波には間に合わない可能性が高い。第3波が経済回復にきわめて重要なクリスマスのショッピングシーズンと重なり、消費者の購買意欲への影響が懸念される。

今年はじめのロックダウン（都市封鎖）の影響に苦しんでいる小売業者にとってはさらなる痛みを意味し、企業や家計を支援するために新たに数兆ドル規模の経済刺激策の必要性を高める可能性がある。

そうした動きは、暗号資産のビットコインに対する需要を高める可能性がある。ビットコインはデジタル資産と伝統的市場の双方で、多くの投資家からインフレに対するリスクヘッジ資産と見られるようなってきている。

「アメリカの実体経済を支えるためには、経済刺激策が必要不可欠との見方が広がっている」と取引プラットフォーム、イートロ（eToro）の暗号資産アナリスト、サイモン・ピーターズ（Simon Peters）氏は述べる。

「ビットコインはインフレに対する効果的なリスクヘッジとしての地位を徐々に固め、アメリカ経済に大量の流動性（資金）が投入されようとしているなか、ビットコインを最終的に1万7500ドル超えまで上昇させる触媒になるかもしれない」

予防接種はまだ先

市場は先週、ワクチン開発成功のニュースによって浮上したが、短期間での予防接種の普及は期待できない。ホワイトハウスの新型コロナウイルス・アドバイザー、アンソニー・ファウチ（Anthony Fauci）氏は、北半球に冬が到来するにつれて、人の活動が屋内が中心となり、感染者数は増加傾向にあると予測する。

コビッド・トラッキング・プロジェクト（Covid Tracking Project）によると、アメリカの入院患者数は過去最高の約7万人まで増加し、1日の死者数は5月以来最多となる約1100人にのぼる。

「数字が日ごとに悪化するなか、消費者心理を表すあらゆる指標は、少なくともこの先数カ月にわたって悪化することを示している」とパンテオン・マクロエコノミクス（Pantheon Macroeconomics）のチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン（Ian Shepherdson）氏はレポートに記した。

ミシガン大学が先週発表した報告書によると、アメリカの消費者心理は今月、予想以上に低下し、エコノミストの予測の82を大幅に下回る77となった。パンテオンによると、この低下はトランプ大統領が再選を逃したことによって、共和党支持者の間で経済回復への期待が落ち込んでいることが原因だという。