三菱UFJフィナンシャル・グループと米アカマイ・テクノロジーズが共同設立したGO-NET(グローバルオープンネットワーク)は、ブロックチェーンを使った世界最速規模の決済ネットワークの運用を2021年に開始する。GO-NET Japan・最高経営責任者の徳永信二氏がCoinDesk Japanの取材で明らかにした。
計画では、来年2月頃にセイコーホールディングス傘下の決済端末「クレピコ」の決済センターと三菱UFJニコスを結ぶ通信サービスを始める。また、同年7月までに複数のカード会社と飲料ボトラーと連携し、自動販売機でクレジットカードをかざして「タッチ決済」ができる少額決済サービスをスタートさせる。
クレピコ(CREPiCO):セイコーソリューションズの決済サービス。タクシー、訪問販売、飲食店などのテーブル決済や、小売・流通向けの店舗POSと情報処理センターを介したカード決済サービスを提供している。
新型コロナで延期された東京五輪
GO-NETの決済基盤は当面、毎秒10万件の取引を処理できる能力で進めていく。VISAの毎秒約7万件の処理能力を優に超えるが、GO-NETの基盤は少額決済ニーズに合わせて毎秒100万件、1000万件まで拡張することが可能だ。5Gの通信システムが普及し、あらゆるものがネットにつながるIoT(モノのインターネット)が拡大していけば、少額決済の取引需要が爆発的に増える可能性がある。
「今はテスト運用の真っ只中。来夏に東京五輪が開催されれば、それまでにNFC対応のタッチ決済を通じて飲料を自動販売機で購入できるようにしたい。実証フェーズを2021年から始め、まずは日本の高い標準に対応した確固たるプラットフォームを育てていく」(徳永氏)
NFC決済:NFCはNear Field Communicationの略で、機器同士を触れずに近づけるだけで通信ができる技術。NFC決済にはSuicaなどのFelica型タッチ決済も含まれるが、GO-NETが来夏にサポートするのはグローバルスタンダード規格の「TypeA/B型」NFCタッチ決済で、多くの訪日外国人が利用することができる。
三菱UFJとアカマイが決済基盤の開発を本格化させたのは2016年。プロジェクトの構想は、すべてのクレジットカード会社やペイメント事業者が使えるオープンな超高速・大容量ネットワークで、一回の取引手数料を大幅に削減して、取引時間は2秒以内という制約を守り、1秒間に最大10万件を可能にするというもの。
世界136カ国で約28万台のサーバーを配置したアカマイのプラットフォームに、独自に開発したウォレット内包型の高速ブロックチェーンを融合させ、GO-NETの構想は具現化した。
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*徳永CEOのインタビュー記事は後日、公開します。
取材・文:佐藤茂
写真:多田圭佑