ビールの販売から始まったシビック(Civic)だが、同社が提供するブロックチェーンによる身分証明は、仮想通貨を新たな産業に導くかもしれない。
CoinDeskは以前、ブロックチェーンで身分証明を管理し、仮想通貨シビック(CVC)を発行しているスタートアップ、シビックが、映画と音楽の祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」で、ビールを販売する自動販売機を展示していることを報じた。
シビックは、2019年4月23日(現地時間)、同様の技術を一般提供するために、自動販売機メーカー12社と提携することを発表した。提携するのは、AAEON、AR Systems、Fastcorp Vending、Global Vending Group、greenbox Robotics、Invenda、IVM、IVS、Retail Automated Concepts、SandenVendo、The-Venders、そしてWemp。
「自動販売機を通じて一般市場への展開に着手します。人々にデジタル身分証明が現実世界でどのように機能するのかを見せられるだけでなく、自動販売機に全く新しい市場を提供します」とシビックのCEO、ヴィニー・リンガム(Vinny Lingham)氏は述べた。
同社によると、提携企業が展開しているコネクテッド自販機(ネットワークに接続している自販機)の数は合わせて100万台を超える。同社は、2019年の終わりまでに自販機1000台に同社の技術を搭載することを目指している。
自販機は、書類スキャンによって、年齢確認や身分証明などの本人確認を行う。ほとんどの場合、ユーザーは、運転免許証をスキャンすることとなるだろう。同社が以前SXSWで展示していた自販機は、本人しか正しく答えられないであろう質問を複数問いかける「ナレッジベース認証(knowledge-based authentication=KBA)」を使用していた。広報担当者によると、同社はベンダーにこの種の本人確認方法も選択肢として残す予定。
ステーブルコイン・ソリューション
リンガム氏は、同社のアプリ「シビック・ペイ(Civic Pay )」 で仮想通貨取引所ジェミニ(Gemini)の米ドルと連動するステーブルコイン、ジェミニドル(GUSD)を使うつもりだとCoinDeskに語った。また、後にはその他のコインも実装するかもしれないとも。
ステーブルコインは、シビックが発行してるシビック(CVC)などの仮想通貨と違い、価格が比較的安定している。そのため、顧客がシビック・ペイを利用して何かを購入する際は、シビックを通して購入されたGUSDが使用される可能性が高い。参加している販売業者は、今よりもはるかに安い手数料で同ステーブルコインを受け取る。
「ベンダーは、年齢制限のかかっていない製品に対して、より安く、より速いトランザクションを渇望している」とリンガム氏はCoinDeskに語った。「(同技術を採用すれば)トランザクション手数料を80%〜90%節約できる」とも。
同社は依然としてクレジットカード手数料を支払わなくてはならない。しかし、アプリがすでにユーザーの身分確認を済ませているため、同社が直面するチャージバックのリスクは比較的低い。(チャージバックとは、カード会社が不正利用を理由にカード売り上げを取り消すこと)
「我々のリスクは、クレジットカード決済を受け付けているベンダーよりも大幅に低いです」とリンガム氏は語る。
ビールの次は
タバコ、アルコール、大麻関連製品が自動販売機を展開していくうえでの足がかりとなるだろうとリンガム氏は語る。
それ以外では、シビック・ペイのトランザクション手数料を大幅に減らせるという利点が、その他カテゴリーへの参入を後押しするかもしれない。しかし、リンガム氏が今後展開を目論む分野として挙げたのは、医薬品だった。
この領域には、年齢制限がかかっているとは限らないが、本人確認が必要、かつユーザーが頻繁に使用する製品が豊富にある。例えば、喘息の治療薬、インスリン、処方抗ヒスタミン剤など。現時点において、これらの医薬品は薬局でしか入手することができないが、シビックは同社の技術をこの業界にもたらすために交渉を進めているとランガム氏は明かした。しかし、実現までのスケジュールはだいぶ長期的だとも。
「これが今後の行き先です。まだそこには至っていないですが」と同氏は述べている。
翻訳:Yuta Machida
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Vinny Lingham image via CoinDesk archives
原文:Civic Inks Deal to Bring Blockchain ID to 1,000 Vending Machines