ビットコインの価格が24時間で約5.6%下落した(当記事執筆時点)。短期的に弱気な見通しがアジア市場で広がったことに加えて、アメリカのバイデン新政権が暗号資産(仮想通貨)の利用を制限する政策を講じるとの憶測が聞かれた。
アジアの取引時間中にスポット市場では利益確定の動きが強まり、デリバティブ市場では機関投資家と「クジラ」と呼ばれる大口保有者によるショートポジション(ビットコインの売り=弱気の投資)が増加した。
データサイトのスキュー(Skew)によると21日、デリバティブ市場でロングポジション(ビットコインの買い=強気の投資)を維持するコストを表す、主要デリバティブ取引所におけるビットコインのパーペチュアルスワップ(満期のない先物取引)の資金は減少し、需要の低下を示している。
ビットコインの下落とともに、イーサリアム(ETH)、ステラルーメン(XLM)、リップル(XRP)、チェーンリンク(LINK)をはじめとするCoinDesk 20の他の暗号資産も値を下げた。
大口保有者は弱気に
ビットコイン価格は10万ドルに上昇する可能性があるという長期的、楽天的な見方は依然として聞かれる。一方、アナリストやトレーダーは、ビットコインの大口保有者が、イーサリアムが19日に史上最高値を更新した後、短期的には弱気姿勢を強めていると話す。
「アジアの市場心理は少なくとも短期的には非常に弱気だ。個人投資家サイドは強気になり過ぎていた」と、中国の暗号資産ウォレット企業、コボ(Cobo)の副社長、アレックス・ツォー(Alex Zuo)氏はコメントした。
アルトコインの最近の価格高騰は、個人投資家の関心の高まりを反映しており、個人投資家は通常、価格ボラティリティにより敏感に反応する傾向があるとツォー氏は指摘した。
結果的に、機関投資家とビットコインの「クジラ」は、市場への資金を投入に消極的になっているとツォー氏は説明する。スポット市場では利益確定の売りが強まり、デリバティブ市場ではショートポジション(弱気の投資)を確保して、裁定取引(市場の価格差から利益を得る取引)を進めている。
スポット市場での売り圧力
データ分析企業クリプトクワント(CryptoQuant)のデータもまた、スポット市場に売り圧力を示している。
取引所のクジラレシオ(取引所へのビットコイン移動量に対するトップ10移動量の相対的なサイズ)は先週以降、0.85を超えている。多くのビットコイン大口保有者が取引所にビットコインを預け入れていることを示している。
これは、大口保有者がビットコインの売却を目論んでいることを表している可能性があり、売りのサインと見られている。
クリプトクワントのキ・ヨン・ジュ(Ki Young Ju)CEOによると、価格が大幅に下落していないのは、売却されたビットコインがある取引所ですぐに購入されているためだという。
「コインベース・プロ(Coinbase Pro)からの大きな買い圧力がなければ、ビットコインは弱気だと考えるだろう」とキCEOはツイート。
キCEOは、注目すべき指標は、コインベースからのビットコインの移動量だと述べる。これは通常、店頭取引(OTC)を通した機関投資家によるビットコイン購入を示す指標となる。
コインベースから大規模にビットコインが移動すれば、ビットコイン価格は回復し、10万ドルまで上昇する可能性さえあるとキCEOはコメントした。
デリバティブ市場の動き
スキューによると、デリバティブ市場においては、「アット・ザ・マネー・インプライド・ボラティリティ」は今月はじめにピークに達した後、急激に減少している。この指標は、価格がこの先1カ月でどれくらい上下するかについての投資家の予想を示している。低下は通常、オプション取引のコストが低下につながる。
「ビットコインのここ数日のプット(売る権利)買いは、最終的に市場に打撃を与えている。一方、アット・ザ・マネー・インプライド・ボラティリティは今月はじめにピークに達して以降、大幅に低下している」と、ロンドンのプライムブローカー、ベクワント(Bequant)のデニス・ビノコウロフ(Denis Vinokourov)氏は話す。
「しかし、コール(買う権利)売りは今日、支配的な動きとなっており、まだ月末満期の5万2000ドルでの契約の非常に多く建玉(未決済の契約)がある。これが強気筋の懸念を和らげるはずだ」(ビノコウロフ氏)
グレイスケール(Grayscale)のビットコイン・トラスト(Bitcoin Trust)の純資産価値に対するプレミアム(手数料)の低下も、買いよりも売り圧力が大きいことを示す悲観的なサインだと、コボのツォー氏は付け加えた。
プレミアムは19日、12月に記録した高水準の40.18%から、8.66%に低下した。
新政権への懸念
ビットコイン価格の下落を引き起こした可能性のあるもう1つの要因は、次期米財務長官に指名されているジャネット・イエレン(Janet Yellen)氏だ。イエレン氏は19日、上院の指名承認公聴会でビットコインや他の暗号資産について否定的な発言を行った。
公聴会でイエレン氏は、バイデン政権はビットコインや他の暗号資産がテロをはじめとする犯罪行為の資金集めに利用されることを防ぐ方法を検討できると述べた。
「新政権が前政権よりも消費者保護に重点を置くことは間違いない。それは、より多くの法執行、規則強化、市場のより強い管理を望んでいることを意味している。規制当局がビットコインに厳しい姿勢をとれば、長く続く下落の時期に入る可能性もある」」と、イートロ(eToro)のガイ・ヒルシュ(Guy Hirsch)氏は指摘した。
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:第46代米国大統領に就任したジョセフ・ロビネット・バイデン・ジュニア氏(Shutterstock)
|原文:Bitcoin Sells Off on Bearish Sentiment, Yellen Worries