暗号資産(仮想通貨)の取引サービスを米国市場で始めた決済大手のペイパル(PayPal)は、昨年の10月~12月期に新たに1600万のアクティブアカウントを追加し、取引収益を増加させた。
ペイパルの同四半期の総取扱高は2770億ドル(約29兆円)となった。取引収益は、57億ドルを計上し、前の四半期から約12%増加。同社は、暗号資産の売買と保有サービスの収益を取引収益としているが、暗号資産に関連した取引は総取扱高に含めていないとしている。
今回の四半期決算は、昨年11月12日に暗号資産(仮想通貨)取引サービスを開始して以来、初めてのもの。同社はビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH) 、ライトコイン(LTC) 、ビットコインキャッシュ(BCH)の売買サービスを3億5000万ユーザーに提供している。
暗号資産ユーザーのログインは2倍
ペイパルによると、暗号資産を購入した顧客は、購入前よりもペイパルへのログインが2倍になっているという。
「当社プラットフォームで取引された暗号資産は、我々の予測をはるかに超えた。資産形成の手段として顧客が暗号資産を利用できるようにすることで、この早期の成功を実現できたことに興奮している。(中略)今後数カ月のうちに、初の国際市場をスタートさせたいと考えている」とペイパルのダン・シュルマン(Dan Schulman)CEOは決算報告で述べた。
また、ペイパルのテクノロジー関連の支出は、前年同期から30%増え、7億3200万ドルになった。
同CEOは、ペイパルは「次世代の金融システム」を構築するために規制当局や中央銀行と連携していると述べた上で、暗号資産ビジネスにも投資を行っているとコメントした。
デジタル資産の価格が高騰しているなか、ペイパルのM&A戦略を問われると、ペイパルのジョン・レイニー(John Rainey)最高財務責任者(CFO)は、買収は「複数年にわたる」戦略だが、現状は良い環境にあると述べた。
「我々はフィンテック・エコシステムの中でユニークな存在であり、飛躍的な成長率と収益性を持ち合わせている。暗号資産を取り扱う能力を持つことができ、我々の現在のビジネスを補完するための(合併、買収などによる)戦略を検討することができる」(レイニーCFO)
小売業者ネットワークの可能性
一方、ペイパルの小売業者ネットワークは、同社が提供する暗号資産取引サービスよりも価値がある可能性があると、サスケハナ・ファイナンシャル・グループ(Susquehanna Financial Group)のジェームズ・フリードマン(James Friedman)氏は話す。
フリードマン氏によると、スクエア(Square)など他社の暗号資産取引は「それほど利益をあげていない」と言う。「基本的にスクエアは暗号資産をサービスとして提供し、市場をリードしているが、実際にはうまくいっていないだろう。取引は興味深いが、決済事業ほどではない。(ペイパルは)信じられないほどの数の小売業者にサービスを提供している」(フリードマン氏)
ビットコインを通常の決済手段として使用することは非常に難しいため、サスケハナはこの問題を調査してきた。サスケハナは昨年12月、120以上の中小企業経営者を対象に、ビットコイン決済の導入に対する関心を調査した。
回答者の70%以上は、ペイパルかスクエアが対応すれば、決済手段としてビットコインを受け入れると答えた。だが回答者の約半数は、ビットコイン決済を導入してもビジネスには大きな影響を与えないと考えていると述べた。
回答者の半数以上は、ビットコインを決済手段として受け入れない主な理由として、ビットコインのボラティリティや税金に関する課題ではなく、詐欺リスクと答えている。
サスケハナはまた、100人以上のアメリカ人を対象に、暗号資産に対する考え方や暗号資産の利用状況、決済に暗号資産を利用する可能性などを調査した。回答者の半数近くは暗号資産を使って製品やサービスを購入しないと答えたという。一方、5.5%は年間10回以上、暗号資産を利用して買い物をすると答えた。
|翻訳:新井朝子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Benny Marty/Shutterstock
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