イーロン・マスク氏が同氏のツイッターアカウントのプロフィールを「#bitcoin」に変えるなどした後、ビットコインの価格上昇に勢いがついた。その影響はビットコインに限らず、暗号資産全体に影響を与えているようだ。
マスク氏が「今にして思うと、必然だった」とツイートした後の11分間で、4700万ドル(約50億円)相当の資金がDeFiプロジェクトのユニスワップ(Uniswap)から移動した。
In retrospect, it was inevitable
— Elon Musk (@elonmusk) January 29, 2021
その動きを、大口保有者の動向をリアルタイムで確認できるサービスのユニホエールズ(UniWhales)は追跡していた。
「クジラ(大口保有者)は市場をコントロールしているだろう。多くの資金を持つ者は、良い情報を持っている傾向にある」とユニホエールズのマット・アーロン(Matt Aaron)CEOは米CoinDeskの取材で語った。
スタートはシンプルなボット
ユニホエールズは昨年9月、ユニスワップにおいて大規模な買いにフラグを立てるシンプルなボット(自動プログラム)としてスタートした。それが「ユニホエールズ」という名前の由来だ。その時から、代表的なDeFiプロジェクトとして知られるユニスワップ上での大口保有者(クジラ)の動きの分析を開始した。
パラフィ・キャピタル(ParaFi Capital)のサンティアゴ・ロエル(Santiago Roel)氏は、少し前からユニホエールズを利用していると話す。
「彼らのサブスクリプション・モデルは、データ分析をSaaS(サーズ:Software as a Service)としてどのように提供するかについてのヒントを与えてくれる。新しいマネタイズ・モデルだ」(ロエル氏)
ティムールという匿名の開発者に教えられて、アーロンCEOはユニホエールズを早くから利用していたという。「ひとりのファンとして、このボットに夢中になった」(アーロン氏)。
ボットはすぐに人気を集め、2人は共同で事業化することを決意した。
「ピックル」の例
資金の動きはわかりやすい。すべて、大規模な買いから始まっている。
例えば1月26日、DeFiトークンのひとつ「ピックル(PICKLE)」の価格は11ドル弱から約14ドルに上昇した。その際、ユニホエールズのボットは、160万ドル(約1億7000万円)相当のピックルがユニスワップで短時間で購入されていることにフラグを立てた。1日の取引高の75%が一度に動く規模だった。
こうした動きを発見することが、ユニホエールズの目的だ。
トレーダーは、保有している暗号資産についてなにか大きな動きがあったのか、あるいは購入すべき状況なのかを知るための通知を必要としている。
シンプルにモメンタム(市場の勢い)に従うトレーダーもいるが、ユニホエールズをアラートとして使い、ツイッターやテレグラムを確認する必要があるかどうかを判断するトレーダーもいる。
最終的にティムールとアーロンCEOは、アプリや定ウェビナー(ウェブセミナー)などに使えるUWLトークンを開発した。他のスタートアップ企業と同様に、ユニホエールズはまだビジネスモデルを構築しているが、DeFi向けの強力な分析コミュニティーを作りあげることに注力している。
ユニホエールズの仕組み
UWLを保有するユーザーは、必要な機能についてアーロンCEOとティムールに意見を述べることができる。ユニホエールズは自らを「自律分散型組織(DAO)」と形容しているが、それは厳密な意味ではない。
「我々は間違いなく、善意ある独裁者だろう。しかし、コミュニティーのすべての人たちとオープンな対話を行う」とアーロンCEOは述べた。
ユニホエールズは無料でも利用でき、ユニスワップやスシスワップ(SushiSwap)での大口の買いや、流動性プールからの大きな資金の動きなどを知ることができる。
5000UWLを保有すると「Pro」、1万6000UWLを保有すると「Whale」となり、Whaleでは、大型ファンドや有名投資家などと関連があるとされるウォレットの動きを追うことができる。
総供給量は1000万UWL。そのうちの35%はパブリックセールとプライベートセールで販売された。セールは昨年11月に行われ、チームは合計で400イーサリアムを調達した。
調達した資金は自動マーケットメーカー(AMM)の流動性プールに入れられ、6カ月間ロックアップされた。アーロンCEOは、これは「長期的な構築を考えていることをコミュニティーに示すため」だったと語った。
プロジェクトをより持続可能なものにするために、収益を上げる他の方法も検討しており、もし手数料を導入する場合は、会社のみならず、すべてのトークン保有者に価値を生むものになるとアーロンCEOは述べた。
「我々はプロジェクトに参加することで、トークン保有者が確実に報酬を得られるようにしたいと考えている」
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Todd Cravens/Unsplash
|原文:If Whales Move the Market, UniWhales Is the Whale Whisperer