いくつかある暗号資産の取引方法において、「アービトラージ取引」は理論上、「100%稼げる手法」と言われている。アービトラージ取引のやり方と仕組み、手順、メリット・デメリット、成功させた人の事例などを解説する。
暗号で利益を得る方法は?
仮想通貨で利益を得る方法はいくつかある。1つの取引所での「現物取引」、仮想通貨を貸出て利子を得る「レンディング」、口座に預けた証拠金を担保にその何倍の金額を取引する「レバレッジ取引」(海外では「暗号資産ETF」という手段もある)などを代表的だが、「アービトラージ取引」と呼ばれる手法もある。
名前は難しそうに聞こえるが、仕組みは意外と簡単で初心者でも始めやすい。
アービトラージ取引とは?
アービトラージ(Arbitrage)とは、日本語で「裁定取引」という金融用語で、別名「さや取り」とも言われる。同じ仮想通貨でも各取引所によって価格が異なることに着目し、安い取引所で買った後、高い取引所に送金し、売却・換金することによって、その利ざやを稼ぐ手法を指す。
アービトラージ取引のやり方
アービトラージで利益を得るための具体的な手順は以下の通りだ。数百円と少額から取引できる。
複数の仮想通貨取引所で口座を開設して入金
アービトラージ取引は取引所間の同一仮想通貨の価格差を利用するため、まず、複数の仮想通貨取引所で口座を開く。その際、何度も送金などの取引を行うため、取引手数料が安い取引所を選ぶことが重要なポイントだ。
取引所ごとに価格差をチェック
仮想通貨は時間帯や相場状況によって取引所ごとの価格差が異なってくる。価格差が利益に繋がるため、いかに価格差を正確に把握するかが大切だ。そのためには便利ツールの活用が欠かせない。例えば、国内の取引所ごとの価格差がわかるサイト「みんなの仮想通貨」や「COINGY」がある。
安い取引所で仮想通貨を購入し、別の取引所に送金・換金
取引所間で価格差が生じたら、取引所で安く仮想通貨を購入し、別の取引所へ送金する。即座に送金できるわけではないので、仮想通貨ごとに送金時間がどのくらいかかるのかを把握しておくと良い。例えばビットコイン(BTC)では、10〜60分かかると言われている。送金が完了したら、価格変動で利益が失われる前に、すぐに日本円に換金する。
「CFD取引」も可能
CFD取引とは、実際の通貨ではなく証拠金を用いて、価格差のみで取引を行う。レバレッジを高め、自己資金の何倍もの取引ができるのが特徴だ。CFD取引では、通貨を売って利益を出すこともできるため、価格の安い取引所で買うと同時に、価格が高い方の取引所で売り注文、つまり、空売りすることができる。
単純売買とは違ってすぐに売り注文できるため、価格変動のリスクは抑えられるが、通貨を売る時にも証拠金が必要になるため、必要資金は大きくなる。
アービトラージでうまく利益を得た人の例
イーサリアム(ETH)でアービトラージ
ある男性は「みんなの仮想通貨」で価格差をチェックしたところ、イーサリアム(ETH)の価格がA取引所での売り値56,550円で、B取引所は55,400円、C取引所は58,450円であることを確認した。
一番安いのはB取引所であることから、55,200円で2ETHの買い注文を出してうまく購入し、一番高いC取引所に送金した。着金したら、58,400円で売り注文を出し、売買が確定した。
従って、売り値(2ETH×58,400円=116,800円)−(2ETH×55,200円=110,400円)=6,400円の利益を得ることができた。
ビットコイン(BTC)でアービトラージ
ある男性は、BTC(ビットコイン)のアービトラージ取引を試みた。この男性はA取引所ではビットコインが安く、B取引所では高くなる傾向があることをおさえていたため、あらかじめA取引所の口座に100万円入金した。
ビットコインの価格差をチェックするアプリ「ビットコインアービトラージ」で価格差をチェックしたところ、価格差が生じていたため、A取引所で870,000円で1BTCの買い注文を出した。すぐにB取引所でも指値で売り注文を出した。872,000円で1BTC売却のオーダーを出したところ、その金額で売却が完了した。
従って、売値(872,000円)から買値(870,000円)を差し引いた利益2,000円を得ることができた。
アービトラージの強み
アービトラージ取引の仕組みは単純で、市場動向を分析するなどの難しい知識を必要としないため、初心者でもトライしやすい。また、市場の激しい価格変動に左右されないため、値上がり益・値下がり益を狙った取引に比べて非常にリスクが低い。一気に大金を稼ぐことはできないが、継続して利益を得ることができる、堅実な投資だ。
アービトラージの注意点
アービトラージで利益を出すためには、各取引所で価格を常にチェックしておかなければならなかったり、送金の手間もかかったりと、時間と労力が必要となる。
また、仮想通貨は法定通貨よりは取引所間の価格差が生じやすいとはいえ、まとまった利益を出せるほどの価格差は頻繁には起こらないため、大半の取引は小さな利益にとどまる。十分な利益を得るには何度も取引を繰り返す必要があり、効率が良い方法とは言えない
関連FAQ
アービトラージとは?
仮想通貨取引所間における同一仮想通貨の価格差を利用して、仮想通貨を安く買い、高く得ることで、その利ざやを稼ぐ手法を指す。
アービトラージの手順は?
まず、複数の仮想通貨取引所で口座を開設・日本円を入金する。その後、取引所ごとの価格差をチェックし、ある取引所で安く仮想通貨を購入し、別な取引所に送金する。そしてその後、送金先の取引所でその仮想通貨を高く売る流れとなる。
アービトラージのメリットは?
銘柄やトレードに関する難しい知識を必要としないため、初心者でも始めやすい。また、取引のリスクが他の取引手法に比べて格段に小さい上、価格変動幅が小さくても利益を見込める。
アービトラージのデメリットは?
各仮想通貨取引所の価格をチェックしたり、送金の手間がかかったりと時間と労力がかかるが、大きな利益は得にくいため、効率良く稼ぐには不向きである。
ローリスクで稼げて、投資者でも安心
アービトラージ取引手法は、他の取引よりも格段にリスクが低く、継続的に稼ぎやすい。投資初心者にとって理想的な取引手法と言える。
一度に大きい利鞘は得にくいが、資金が大きければ大きいほど、当然、利ざやも大きくなるため、やりようによっては十分稼ぐことができる手法だ。
参考文献
アービトラージ|金融・証券用語解説集|大和証券
https://www.daiwa.jp/glossary/YST0001.html
裁定取引/アービトラージ│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/sa/J0288.html