加熱する投資ブームを背景に、資産のない人にローンを組ませて投資させる「借金投資」の被害が増えている。暗号資産(仮想通貨)の交換と関連づけて投資を持ちかけられてトラブルになるケースも多く、その手口は巧妙だ。本記事では、仮想通貨をめぐる詐欺やトラブルに遭わないように、手口や見分け方を紹介する。
「借金投資」への注目が集まる
「借金投資」は、悪質な業者に指南されるがまま、本来なら審査が通らないはずのローンを不正利用して大金を借り、得た資金を投資に注ぎ込んで被害に遭うケースをいう。資金を騙し取られるだけでなく、ローンの不正利用が発覚して金融機関から一括返済を求められ、自己破産に追い込まれることもある。
NHKの借金投資の特集によれば、ある男性は、投資のノウハウを紹介する動画で人気のユーチューバーの交流会に参加したことをきっかけに、指南されるがまま、本来は投資に使うことができない住宅ローンを不正利用して借金し、その資金で相場よりも1,000万円ほど高い不動産を購入させられたという。
詐欺で借金をする例は仮想通貨でも…
不動産投資に限らず、仮想通貨投資のために借金をする例もある。22歳の女性は、同級生のSNSをきっかけに暗号資産の運用に興味を持ち、消費者金融3社から合計150万円を借りた。
借金をするよう指示したのは同級生から紹介された詐欺グループの男で、女性は最初こそ詐欺を疑ったものの、「引越し代金という理由にすれば、消費者金融で借りられる」「1日で終わらせないと借りられない!」などと現金を急いで準備するように迫られ、指示に従ってしまったという。
詐欺と発覚した後、そのショックで女性はうつ病となり、その若さで自ら命をたつという最悪の結末になった。
「借金投資」の誘いは仮想通貨でもあり得る?
詐欺師はトレンドに敏感で、「流行っているけれど、あまりまだ知られていない」分野で詐欺を働くと言われる。つまり、仮想通貨は詐欺の格好のネタと考えていい。
例えば、「第三者に金融機関から仮想通貨投資以外の名目で借金をさせ、得たお金でビットコインなどの仮想通貨を不当につりあげた価格で買わせる」という手口は、冒頭で紹介した不動産投資と同じ詐欺的スキームであり、仮想通貨における借金投資の罠だと心得ておきたい。
借金して投資するとどのようなリスクがある?
消費者金融の無計画な利用は、リスクがとても大きい。返済時には借りた金額に金利も上乗せされるため、金利が高いほど負担は重くなり、返済に要する期間も長くなる。
仮想通貨は相場の値動きが非常に大きいため、価格が急騰して短期間で大きな利益を得る可能性もある反面、大損失を被ることもある。返済できる目処がないのに借金するのは危険であり、投資は基本的に自分の収入の余剰資金を当てる、ということを肝に銘じておきたい。
正規の仮想通貨投資との見分け方は?
詐欺と、正規の投資を見分けるには以下の点に注意しよう。
- 借金が前提の投資ではないか
- 正規の取引所・販売所を使った取引であるかどうか
- 「特別なリターンがある」といった投資を煽る話ではないか
- 元本保証を約束していないか(100%元本保証は詐欺と判断)
そのほかの暗号通貨投資詐欺の事例
事例1:高配当を約束
「仮想通貨の運用のプロ集団などに資金を預けておくだけで、月利10%といった高い配当を得られる」などの誘い文句で資金を振り込ませる方法で、「運用していた口座が凍結された」などと言われて資金を引き出せなくなる結末が多い。
事例2:「当選」→振り込め詐欺
「仮想通貨の自動売買システムを購入できる権利に当選しました」などと書かれたメールが届き、
権利を購入するために指定口座に資金を振り込むよう指示される。振り込み後、担当者が音信不通になる。
事例3:SNSを利用して接近
ビジネス特化型SNS「LinkedIn(リンクトイン)」を通じて知り合い、長期にわたってやりとりした後、詐欺師が管理するサイトに資産を移すよう誘導して、騙し取る。
そもそも詐欺に遭わないための対策は?
他人からの「儲け話」は要注意
詐欺師は「善人」のふりをして言葉巧みに近づいてくる。友人や知人から投資話を持ちかけられたり、金融庁や証券会社と名乗る人物から連絡がきたり、手口はさまざまだ。他人からの儲け話には関わらないようにしよう。
正規の仮想通貨取引所や販売所を利用する
仮想通貨交換業社は金融庁・債務局への登録が義務付けられている。取引の際には、登録事業者であるかを確認して正規の取引所を利用しよう。またその事業者が金融庁などから行政処分を受けていないかなどもあわせて確認しておきたい。
詐欺事件に関する最新情報にアンテナをはる
詐欺の手口は時代やトレンドに合わせて、次から次に変化し巧妙さを増している。どんな手口があるのか詐欺事件に関する最新情報には気を配っておこう。
仮想通貨詐欺に関するQ&A
「借金投資」とは?
悪質な業者に指南されるがまま、本来なら審査が通らないはずのローンを不正利用して、得た資金を投資に注ぎ込んで被害にあうケースのこと。
仮想通貨の「借金投資」の手口は?
例えば、金融機関から仮想通貨投資以外の名目で借金をさせて、得たお金で仮想通貨を相場よりも高い価格で買わせる、という手口が考えられる。
借金して投資するのはリスキー?
仮想通貨は値動きが大きいため、大損失を被ることもある。返済できる目処がないのに借金するのは危険であり、投資は自分の収入の余剰資金で投資するのが鉄則だ。
騙されないようにするには?
他人からの「うまい話」は基本的に全て詐欺と判断するのが賢明だ。「元本保証」「高配当」などのキーワードは要注意で、取引には金融庁に登録された正規の事業者を利用しよう。
「知識」という武器を身につけよう
「投資に興味はあるけれど、何から始めていいのかわからない」という初心者=情報弱者は、詐欺師に狙われやすい。「損はしない」「必ず儲かる」という耳障りの良い言葉を鵜呑みにせず、投資の基本的な仕組みや、詐欺の手口などの知識を日頃から学んでおくことで、自分の身を守ろう。
参考文献
要注意! あなたの身近に潜む”借金投資“の罠 – クローズアップ現代|NHK
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pADg1yjMpd/
暗号資産投資トラブル 命を絶った22歳の女性 被害どう防ぐ 相談窓口は|NHK事件記者取材note|NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/shougen/shougen47/
安易に借金をしてはいけません~多重債務に陥らないために~|金融庁
https://www.fsa.go.jp/ordinary/shakkin_ippan2.pdf
暗号資産(仮想通貨)に関するトラブルにご注意ください!|警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/keizai/pdf/kasoutuukakoushinn.pdf
免許・許可・登録等を受けている業者一覧|金融庁
https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html
暗号資産交換業者登録一覧|金融庁
https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf