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クリエイターがNFTを販売し利益を得た場合、基本的に税金が発生する。本記事では、クリエイターが知っておきたいNFTにおける税の仕組みについて解説したい。
クリエイターがNFTを販売したときの税金
クリエイターがNFTを販売し利益を得た場合、基本的に2つの所得区分に分類されると考えられる。
NFT販売に関する2つの所得区分
国税庁が2022年4月に公表したタックスアンサーによると、NFTを譲渡した場合の利益は「譲渡所得」「事業所得」「雑所得」のいずれかに該当する旨が示された。それぞれ以下のように整理できる。
【財産的価値と交換できるNFTを譲渡したケース】
所得区分 | |
---|---|
NFTが譲渡所得の基因となる資産に該当し、得られた所得がNFTの値上がり益と認められる場合 | 譲渡所得 |
上記の内、譲渡が営利を目的として反復的に行われている場合 | 事業所得、雑所得 |
NFTが譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合 | 雑所得 |
上記の内、規模が大きいものなど | 事業所得 |
クリエイターとしてNFTを販売する場合、一般に営利を目的として反復的に行われると考えられるため、「事業所得」か「雑所得」に相当すると考えられる。
なお2022年8月、国税庁は収入が300万円以下の副業は雑所得とみなす方針を発表した 。副業としてクリエイター活動を行っており、その収入が300万円に満たない場合、雑所得に該当する可能性が高いだろう。
税率はおよそ15~55%
NFTの販売で得た利益は通常「総合課税」として税金が計算される。総合課税とは、NFTの販売にかかる所得だけでなく、その他一定の所得を合算して所得金額を計算し、まとめて課税する仕組みだ。その税率は所得金額に応じて5~45%となっている。
【所得税の税率】
所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円以上~194万9,000円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上~329万9,000円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上~694万9,000円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円以上~899万9,000円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円以上~1,799万9,000円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上~3,999万9,000円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
※2037年までは2.1%の復興特別所得税が別途かかる
さらに、所得税のほか住民税がかかる。住民税におけるNFTクリエイターとしての所得は、一般的に「所得割」部分で税金が課され、その税率は概ね10% だ。つまり、所得税と住民税を合わせた15~55%がNFTの販売にかかる税率となる。
NFT販売における税金の計算方法
上述の通り、クリエイターとしてNFTを販売した場合の利益は「事業所得」か「雑所得」として課税されると考えられる。ここではそれぞれの所得の計算方法を解説する。
事業所得の場合
事業所得は以下のように計算する。
【事業所得の計算式】
総収入金額-必要経費
クリエイターとしての収入が500万円、必要経費が200万円の場合、事業所得は300万円となる。
事業所得の場合、複式簿記といった正規の原則にしたがって帳簿を作成すると「青色申告特別控除 」を利用できる可能性がある。事業所得の必要経費は、原則として実際に支出したものを算入すべきだが、青色申告特別控除は別途最大65万円を必要経費として計上できる制度だ。所得が小さくなるため税負担が小さくなりやすい。
雑所得の場合
雑所得の計算方法は以下のようになっている。
【雑所得の計算式】
総収入金額-必要経費
計算方法は事業所得と大きく変わらない。ただし、事業所得には青色申告特別控除といった税負担を抑える特別な仕組みがあるが、雑所得とみなされると基本的にそれらの仕組みは利用できない。したがって収益が同程度なら、事業所得より雑所得の方が大きな税負担となりやすい。
その他、NFTクリエイターに税金が発生するタイミング
クリエイターとしてNFTを販売する以外にも、NFTに関連する取引で税金が発生する可能性がある。主なケースを確認しよう。
保有する暗号資産(仮想通貨)を売却したとき
NFTの販売代金は暗号資産で支払われるケースが多いが、受け取った暗号資産を売却し現金化するクリエイターも少なくないだろう。暗号資産の売却益は、原則として雑所得とみなされる旨が国税庁から公表されている 。受け取った暗号資産を現金化し譲渡益を得た場合、クリエイター業とは別に所得を認識する必要がある。
他のNFTを取得したとき
自身で作成したNFTではなく、他のNFTを取得する場合、税金が発生する可能性がある。具体的には以下のようなケースだ。
【財産的価値と交換できるNFTを取得したケース】
所得区分 | |
---|---|
役務提供の報酬としてNFTを受け取った場合 | 事業所得、給与所得、雑所得 |
臨時・偶発的に取得した場合 | 一時所得 |
上記以外 | 雑所得 |
また他のNFTを暗号資産で購入する場合、購入の対価として支払う暗号資産に対して税金が発生する可能性がある。暗号資産で購入代金を支払うケースは、暗号資産を譲渡したものとみなされるためだ。例えば10万円の暗号資産でNFTを購入する場合、その暗号資産を10万円で売却したものとして扱われる。
NFTの購入に伴い暗号資産の売却益が発生した場合、上述の通り原則として雑所得として計上しなければならない。
他のNFTを売却したとき
他のNFTを取得し、その後売却して利益を得た場合、「譲渡所得」とみなされると考えられる。譲渡所得の計算式は以下の通りだ。
【譲渡所得の計算式】
収入金額-(取得費+譲渡費用)
仮に20万円で取得したNFTを30万円で売却したとき、譲渡所得は10万円となる。
ただし他のNFTを売却した場合の利益は「雑所得」や「事業所得」とみなされるケースもあるため注意してほしい。
確定申告の方法
確定申告には申告書の作成が必要だ。国税庁のウェブサイトからダウンロードすることができる。しかし手書きでの作成は手間がかかるほか、数値等の誤りが発生しやすい。そこで、国税庁の「確定申告書等作成コーナー 」の利用を推奨する。
国税庁の申告書作成コーナーを利用する
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は、インターネット上で申告書を作成できるサービスだ。入力した数値を元に控除や数値の丸めが自動的に処理されるため数値の誤りが起きにくい。また画面上でガイドを受けられるため、記入漏れを防ぐ効果も期待できる。確定申告書等作成コーナーの利用料は無料だ。
国税庁は暗号資産の損益計算用のファイルも提供している。暗号資産を複数取引すると税制上の取得単価が変動するケースがあるが、その計算に利用できる。取引所から送られる年間取引報告書を利用して損益を計算する場合、「総平均法用」のファイルを利用してほしい。
申告の時期は翌年の2月中旬~3月中旬
所得税は1~12月に発生した所得に対して課せられるため、年内は税が確定しない。そのため、確定申告は原則として翌年の2月中旬から3月中旬の間に行う。2022年分の場合、2023年2月16日~3月15日が確定申告の期間だ。
なお、上記は税金を納める場合の期間で、税金の「還付」を受ける場合は必ずしも翌年の2月中旬から3月中旬の間に申告する必要はない。還付申告の場合、翌年の1月1日から5年にわたって提出できる 。
まとめ
NFTクリエイターとして得た利益は「事業所得」か「雑所得」に該当する可能性が高く、税率は所得税・住民税合わせておよそ15~55%だ。1月から12月までの利益を計算し、申告すべき所得がある場合、翌年の2月中旬~3月中旬に確定申告してほしい。
なお、本記事は一般的な内容をまとめたものに過ぎない。納めるべき税金は個別の事情によって異なる。自身はどのような納税をすべきか個別に相談したい場合、税理士の利用を検討してほしい。
監修
藤村大生
Aerial Partners事業開発部長 公認会計士 / 税理士
監査法人で監査業務や会計・金融アドバイザリー業務に従事した後に株式会社Aerial Partnersに入社。暗号資産交換業者 / Dapps・NFT事業者に対しデータ管理システム提供やアドバイザリー業務を行う他、暗号資産の個人投資家向けの損益計算ツール(Gtax)の提供、確定申告支援サービス(Guardian)の提供を行なっている。Aerial税理士法人代表パートナー。
・株式会社Aerial Partners公式サイト
・Gtax公式サイト
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参考文献
No.1525-2 NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係(国税庁)
暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和3年12月)(国税庁)
No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)(国税庁)
No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)(国税庁)