現在最も有名な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインにおいて、最小の通貨単位を1 Satoshi(0.00000001 BTC)と表記する。これはビットコインの開発者・作成者とされており、2008年にインターネット上でビットコインに関する論文を発表したサトシ・ナカモトが由来である。
サトシ・ナカモト(さとし・なかもと)の正体は謎に包まれており、いくつかの説があるが決定的な証拠を挙げるには至っていない。このような状況から次々と臆測が飛び交い、我こそがサトシ・ナカモトであると名乗り出る人物が後を絶たない状況だ。本記事では正体不明の開発者サトシ・ナカモトについて、現時点で明らかになっていることを解説する。
<記事のポイント>
- サトシ・ナカモトは、ビットコインの開発者とされている。
- 実際に誰がサトシ・ナカモトかは不明。正体は現在も謎。
- サトシ・ナカモトは、Winnyの開発者である金子勇氏であるという説がある。
- ビットコインの最小単位は1 Satoshi(0.00000001BTC)である。
ビットコイン(BTC)の開発者 サトシ・ナカモトとは?
サトシ・ナカモトとはビットコイン(BTC)の開発者とされている人物であるが、その正体は依然として明らかにされていない。その功績から2016年度のノーベル経済学賞にもノミネートされており、実在すら証明されていない人物のノミネートは前代未聞である。
サトシ・ナカモトは、仮想通貨の礎を作った人物として高く評価されているが、なぜその正体を隠したのか、その理由は定かでない。さまざまな臆測が飛び交っているが、当の本人から正体を隠している理由が説明されたこともない。
ビットコインの産みの親で、大量のビットコインを所有している正体不明のサトシ・ナカモトは、謎が謎を呼び話題性に事欠かない人物として仮想通貨業界では広く知られている。
ちなみに漢字で「中本哲史」と表現されることがあるが、それが正確な表記であるかは分かっていない。
サトシ・ナカモトの歴史
サトシ・ナカモトはビットコインの最初期を支えた人物として歴史に刻まれている。具体的にその歴史を紹介する。
2008年:暗号資産(仮想通貨)の概念を示した論文をインターネット上で発表
正体不明の人物が存在する根拠にもなるのが、サトシ・ナカモトがインターネット上に発表した論文である。2008年に発表された『ビットコイン: P2P電子通貨システム』は現在の暗号資産(仮想通貨)の概念を示したものだ。ビットコインのような仮想通貨を使えば、金融機関を通さずに低コストで金銭のやり取りができることを提案し、それを実現するための仕組みを説明している。
2009年:ビットコインの運用を開始
2009年はビットコインの運用を開始した年であり、サトシ・ナカモトはビットコインのソフトウェアの発表や、ビットコインの最初のマイニングを行なったとされている。この年にサトシ・ナカモトは「Bitcoin Forum」を開設。サトシ・ナカモトはこのフォーラムにいくつかの投稿をしており、アーカイブも残されている。
2010年以降:プロジェクトの管理を引き渡し消息が分からず
サトシ・ナカモト氏は2010年以降もしばらくはビットコインに関わり続けたといわれているが、それ以降の動きに関してはほとんど痕跡がない。すでにプロジェクトの管理を引き渡しておりナカモト氏の消息は不明だ。
サトシ・ナカモトの正体に関する様々な憶測
その正体が不明であることから、自分こそがサトシ・ナカモトと名乗る人物が後を絶たず、メディアなどによって様々な臆測が立てられている。そのなかでも代表的な説を紹介する。
日系人エンジニアのドリアン・ナカモト氏説
2014年にニューズウィーク誌の記者が大々的にサトシ・ナカモトの正体であると報道したのが、日系人エンジニアのドリアン・ナカモト氏である。一般的にサトシ・ナカモトは日本名であると考えられており、ドリアン・ナカモト氏の日本時代の幼名がサトシであったことが根拠となっている。
しかし、この説は当のナカモト氏本人により否定されており、名前以外の根拠もないため説としての信憑性は弱い。しかし、サトシ・ナカモトのイメージにドリアン氏の写真が使われることも多く、事実とは関係なくミーム現象としての広がりを見せている。
Winnyの開発者である金子勇氏説
ファイル共有ソフトWinnyを開発した情報工学者の金子勇氏もサトシ・ナカモトであると噂されている人物の一人だ。Winnyは仮想通貨と仕組みに共通する部分が多く、優秀な技術者であることがビットコインの開発から想像されるサトシ・ナカモト氏の人物像と一致している。
残念ながら金子氏は2013年に急性心筋梗塞で死去している。もし仮に金子氏がサトシ・ナカモトであれば、ビットコインの開発者はすでにこの世にいないことになる。
複数のプログラマーで構成されるチーム説
サトシ・ナカモトは偽名である可能性が高く、特定の個人を指すのではなく、実態は複数人のチームであったと指摘する声もある。論文の内容は経済学の分野も含めて専門的であり、一人の技術者が執筆した論文としては完成度が高過ぎることが指摘されている。個人の特定が今もできていないことから、チーム説は有力説の一つとなっている。
クレイグ・スティーブン・ライト氏説
クレイグ・スティーブン・ライトはオーストラリア出身のコンピュータ科学者であり、自らがサトシ・ナカモトであると主張している。しかし、この主張には多くの疑問があり、彼の証拠や説明に対する反証が多数存在する。特に、ライト氏が公開した証拠の信憑性に対しては多くの専門家から疑問が呈されている。
結果として、サトシ・ナカモトの正体については今なお不明であり、クレイグ・スティーブン・ライトの主張が真実であるかどうかは、広く受け入れられていない。したがって、彼らの関係は主に論争と疑念に包まれている。
Winnyとブロックチェーンの違い
先程、サトシ・ナカモトはWinnyの開発者である金子勇氏である説について触れたが、そもそもWinnyの仕組みとブロックチェーン技術にはどのような違いがあるのか。
端的に言えば、Winnyとブロックチェーンは、データの管理と共有の方法において根本的に異なる技術だ。Winnyは、2002年に開発されたP2Pファイル共有ソフトウェアであり、ユーザー同士が直接ファイルを交換する仕組みを提供する。Winnyは中央サーバーを持たず、ファイルの共有をネットワーク内のピア同士で行うが、情報の管理やセキュリティに関しては課題が多い。
一方、ブロックチェーンは、デジタルデータの分散型台帳技術であり、情報の整合性と改ざん防止を確保するための仕組みである。ブロックチェーンでは、取引やデータが「ブロック」と呼ばれる単位で記録され、それらのブロックが連鎖的に繋がれて「チェーン」を形成する。このチェーンはネットワーク内の全ノードによって共有され、各ノードがブロックの検証を行うため、単一の中央管理者が存在せず、分散型の信頼性を確保する。
要するに、Winnyはファイル共有のためのP2Pネットワークであり、ブロックチェーンはデータの整合性を保ちながら分散管理を実現する技術だ。両者は目的とアーキテクチャにおいて根本的に異なる。
サトシ・ナカモトは大量のビットコインを保有している?
日本円にすると兆単位の資産
サトシ・ナカモトは、112万5,150BTCを保有しているといわれている。ビットコインの価値は常に変動するため、その正確な価値については現在のビットコインの価格を参照することを推奨するが、100万ビットコインを日本円に換算すると兆単位の資産を保有していることになる。
運用開始以来、一度も動いていない
サトシ・ナカモトの保有するビットコインは、運用開始から10年以上経っても一度も動いたことがない。1BTCも決済に使用されることはなく、売却して資産化されてもいないのである。サトシ・ナカモトが保有する112万5,150BTCは「失われたビットコイン」と呼ばれ、このビットコインを動かせるのはアクセス権を持つサトシ・ナカモト本人、またはそのチームの一員である。
世界一の資産家になる可能性がある
サトシ・ナカモトは、今後のビットコインの価格上昇次第で世界一の資産家になる可能性があるという指摘もある。2022年時点で世界長者番付一位のイーロン・マスク氏の保有資産は2,190億ドル(約27兆円)。つまり、多額のビットコインを保有するサトシ・ナカモトは、すでに長者番付にランクインするほどの資産家ということになる。
今後のビットコインの価格変動や長者番付の順位変動によっては、正体不明のサトシ・ナカモトが世界トップの資産家になるかもしれない。
関連FAQ
ビットコインの開発者・作成者とされているが、実際にどの人物がサトシ・ナカモトなのかは判明していない。ちなみにビットコインの最小単位は「1 Satoshi」と表現する。
日系人エンジニアのドリアン・ナカモト氏説(※本人は否定)、ファイル共有ソフトのWinnyの開発者である金子勇氏説(※すでに死亡)、特定の個人を指すのではなく複数のプログラマーで構成されるチーム説、オーストラリア出身のコンピュータ科学者であるクレイグ・スティーブン・ライト氏説(※本人が主張)などがある。
確定的なことは分からないが、112万5,150BTCを保有しているという説が根強い。ただし、量は不明だが保有しているということは確定的で、運用開始から全く売却されたことがないとされている。
まとめ
サトシ・ナカモトの正体は特定の個人、チーム、死亡説など、さまざまな憶測が飛び交っているが、残念ながら今のところ決定的な証拠はない。まだ一度も疑われたことがない人物がサトシ・ナカモトであることも十分に考えられる。
確かなことは、サトシ・ナカモトが発表した論文により現在のビットコインが誕生したことと、112万5,150BTCものビットコインを保有していることである。
ビットコインを取引するには?
サトシ・ナカモトが開発したビットコインを取引したいと考えるなら、仮想通貨の取引所の口座開設が必要だ。ビットコインはどこの仮想通貨取引所でも取引できるので、仮想通貨の取引が初めての人は知名度が高く、取引量の多い取引所で口座を開設しよう。