ユーティリティトークンとは? 他のトークンとの違いや具体的な事例を紹介

暗号資産(仮想通貨)において、トークンはブロックチェーン技術を用いて発行された電子的な証票であり、ビットコイン、イーサリアムをはじめとする暗号資産もトークンという枠組みに位置付けられている。

トークンにも種類があり、本記事で扱うユーティリティトークン、ガバナンストークン、セキュリティトークンなどがある。だが、その違いは理解しにくいかもしれない。

本記事では、ユーティリティトークンと他のトークンとの違い、具体的な事例について紹介した上で、ユーティリティトークンを入手する方法と将来性、価値を判断するポイントを解説する。

ユーティリティトークンとは

ユーティリティトークンとは、特定のコミュニティや、サービスなどを利用するにあたって、権利や機能を有する実用性のあるトークンのことである。ユーティリティ(utility)という言葉の意味の通り、なんらかの実用性が認められているトークン全般のことを指すので、ユーティリティトークンの範囲は広い。

具体的にどのような実用性を有したトークンが存在するのか例を挙げると、サービス内で物を購入したり利用料を支払ったりする目的で使用されるトークンや、利用者の行動に対してインセンティブを支払う目的で発行されるトークンなどがある。また、保有することでコミュニティ全体の意思決定に関われるトークンや、保有している量や期間に応じて報酬が発生するトークンもある。

このように、ブロックチェーン上で発行される実用性が認められたトークンがユーティリティトークンと呼ばれている。

ユーティリティトークンと他のトークンとの違い

トークンには、ユーティリティトークン以外にもトークンが存在する。以下にそれぞれのトークンとユーティリティトークンの違いをまとめた。

ガバナンストークン

ガバナンストークンは、ユーティリティトークンの種類の1つであり、実用性の中でも組織運営に対する権利に特化したトークンを表す言葉として用いられる。ブロックチェーンの仕組みを利用して作られた組織・コミュニティであるDAO(分散型自律組織)には、特定の管理者が存在せず、ガバナンストークンの保有状況により投票を行い、意思決定する。

DAOにおいて、ガバナンストークンは組織運営における有用性が認められているので、ユーティリティトークンの中でも、DAOの意思決定における権利を有するトークンをガバナンストークンと呼んでいる。

セキュリティトークン

セキュリティトークンは、ユーティリティトークンとは異なり、金融商品としての性質を持っている。セキュリティトークンは、投資対象として発行には政府の許可が必要になるが、ユーティリティトークン自体に金融商品としての性質がないので、発行に政府の許可を必要としない。

ユーティリティトークンは、暗号資産取引所などでは他の金融商品と同様にリアルタイムで価格が変動するが、金融商品としての性質はない。サービス・コミュニティに関する機能や権利のみを保有しており、株式や債券のような価値を裏付け、担保となる資産が存在しないからだ。

NFT(ノンファンジブルトークン)

仮想通貨として使用されているユーティリティトークンはファンジブルトークンに属する。代替可能であるかがNFT(ノンファンジブルトークン)との違いになる。ユーティリティトークンの通貨は、誰が100ドル分を持っていても100ドル分の価値を持つように、代替可能な対象である。しかし、NFTはデジタルアートやゲーム内アイテムなどの代替不可能な資産が対象である。

ただ、特定のNFTを保有すると動画・画像・メッセージなどの保有者限定コンテンツを閲覧できるなどの、保有者にとって有用な性質を持つNFTも生まれている。ユーティリティの性質を持ったNFTもユーティリティトークンといえるだろう。

ユーティリティトークンの事例について

ユーティリティトークンの具体的な事例について3つ紹介する。

DAppsのプラットフォームで使用されるETH

イーサリアムはDApps(分散型アプリケーション)のプラットフォームであり、ETHは利用料を支払うのに使われているのでユーティリティトークンの1つである。イーサリアム上のNFTも購入可能で、仮想通貨全体の時価総額ランキングが2位であることからトークンを使用する上で幅広い有用性を持っている。

WebブラウザBraveで使用されるBAT

WebブラウザのBraveでは、ベーシックアテンショントークン(BAT)と呼ばれるユーティリティトークンが使用されている。ユーザーはBrave上で広告を閲覧することで少額のBATを受け取れる。受け取ったBATは投げ銭として、Web上のクリエイターを支援する手段にも利用できる仕組みだ。

メタバースゲームのThe Sandboxで使用されるSAND

The Sandboxは、メタバースと呼ばれる仮想空間上でキャラクターやアイテムなどの作成ができる自由度の高いゲームであり、ゲーム内で使用されるトークンがサンド(SAND)だ。SANDは、ゲーム内アイテムの購入に使用できるだけでなく、ゲーム内の土地であるLANDを貸し出して不動産のような賃料収入を得られる仕組みもあり、利用方法の自由度も高い。

ユーティリティトークンを入手する方法

ユーティリティトークンを入手する方法は主に2つある。

  • サービスやコミュニティに貢献する
  • 暗号資産(仮想通貨)取引所で購入する

サービスやコミュニティに貢献する

ユーティリティトークンは購入する以外にも入手する方法があり、サービスやコミュニティ内でトークンを発行する仕組みがある場合は、元手を必要とせずにトークンを入手できる。発行条件はユーティリティトークンによっても異なるが、サービスやコミュニティに貢献することが条件となっている場合が多い。

暗号資産(仮想通貨)取引所で購入する

サービス内でユーティリティトークンを入手できない場合や、貢献のハードルが高く条件を満たせない場合は、暗号資産取引所を利用して購入することで入手できる。今回紹介したETH・BAT・SANDは、Coincheck(コインチェック)で取り扱いがある。ユーティリティトークンの取扱数が多いのは海外の取引所であるが、CoinDesk Japanでは、金融庁に登録された国内の仮想通貨取引所で暗号資産を購入することを推奨している。

ユーティリティトークンの価値と将来性を判断するポイント

特定のユーティリティトークンの価値や将来性を判断するにあたって重要なポイントは以下の2つだ。

  • サービス・コミュニティが魅力的である
  • 長期的な保有を促す仕組みがある

サービス・コミュニティが魅力的である

ユーティリティトークンを発行するサービスやコミュニティが魅力的であれば、利用者が増加し、トークンの価値が上昇することが期待される。サービスに対する機能や権利を有する性質から、サービスの普及にトークンの価値が影響されやすい。魅力のないサービスは、将来的にトークンが無価値になる可能性もある。

長期的な保有を促す仕組みがある

ユーティリティトークンを保有することにメリットがなければ、トークンを保有するが増えないので、価値が上昇しにくい。トークンを長期的に保有することで、メリットが得られる仕組みを作ることがトークンの価値を高めるのに必要になる。ガバナンストークンのようにコミュニティの意思決定に関わる権利や、保有によりインセンティブが得られる仕組みを構築するとトークンの長期保有を促しやすいといえるだろう。