金融市場に現れるクジラとは? ビットコイン市場に大きな影響を与える理由を解説

2021年頃からビットコインのニュースのなかで「クジラ(Whale)」という言葉が使われるようになり、暗号資産(仮想通貨)市場でも大きな影響を与える存在として注目されるようになった。クジラの意味や正体、暗号資産取引における影響を解説し、クジラの動きを分析することで今後のビットコイン価格を予測しやすくなる理由と、分析に役立つ仕組みについても紹介する。

クジラ(Whale)の意味と正体

クジラとは、金融市場における大口投資家のことを指す。ビットコイン市場におけるクジラは、1,000BTC(約28億円、2022年6月27日時点)以上保有する投資家を指す場合が多い。2022年2月末時点で、ビットコイン市場には2,259のクジラが確認されている。

クジラの正体は、ビットコインを初期から大量に保有していた投資家と、新たにビットコインに参入した金融機関・企業などが考えられるだろう。ビットコイン価格が安かった時期であればともかく、基本的にその正体は機関投資家であると考えるほうが自然である。

クジラが暗号資産取引に大きな影響を与える理由

クジラが保有するビットコインの総量は、ビットコイン市場においても大きな割合を占めており、その動きは価格を分析する上で無視できない。クジラが暗号資産取引に大きな影響を与える理由は下記の2つが挙げられる。

  • 金融機関や企業などの大口投資家が増えている
  • 仮想通貨市場の価格を動かせる

金融機関や企業などの大口投資家が増えている

ビットコインの開発者であるサトシ・ナカモトが112万5,150BTCを保有しているように、初期に保有していた開発者や個人投資家がビットコインの価格変動によりクジラになるケースもあるが、前述したとおり、クジラの多くは金融機関や企業などの資金を持った機関投資家である。

クジラが増えるということは、ビットコインの大量保有者が増えることになるため、ビットコイン価格も上昇しやすい。また、金融機関や企業などが投資価値を見出すほど、ビットコインが投資対象として注目されていることを示している。

仮想通貨市場の価格を動かせる

ビットコインは取引量が他の金融市場と比較して少ないため、クジラが多く参入し、クジラが保有するビットコインの割合が大きくなるほど、ビットコイン価格を操舵できる可能性が高まる。

例えば、1匹の大量にビットコインを保有しているクジラが任意のタイミングでビットコインを売買することによって、意図的にビットコイン価格を操作することも不可能ではない。よって、近年の暗号資産取引では、クジラの動きが市場に大きな影響を与えると考えられている。

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クジラに関するニュース

ロシアでビットコイン・クジラが増加

2022年のウクライナ侵攻によるロシアへの経済制裁を背景に、ロシアでビットコイン・クジラが増加した。欧米諸国が、SWIFTと呼ばれるネットワークからロシアの銀行を締め出す措置を行うと、ルーブル建ての暗号資産の取引高が上昇した。経済不安により2,108まで落ち込んだクジラの数は、2月末には6.5%増の2,259まで増加している。

「NBA Top Shot」のクジラがNFT融資市場で450万ドル調達

人気NFTトレーディングカードゲーム「NBA Top Shot」の初期の大口保有者でありクジラのマイケル・レヴィ氏は、NFTへの投資をきっかけに2022年4月に暗号資産業界に参入した。同氏は仮想通貨のフロー(Flow)に450万ドル(約5億8000万円)を調達している。

クジラたちがテザー(USDT)からUSDコインへ移行

ステーブルコインは法定通貨のような裏付け資産を持ち、価格が安定しやすいように設計されたコインであり、多くの仮想通貨投資家がステーブルコインを売買することで特定の仮想通貨の取引をしている。クジラの間では、ステーブルコインとしては最も時価総額が高いテザー(USDT)から、2番目に高いUSDコインに移行する動きがある。テザーは過去にその価値が大きく揺らいだテザー疑惑があり、ステーブルコインとしてはUSDコインが魅力的であるとクジラが考えていることが推測可能だ。

クジラの動きを分析する意義

クジラは仮想通貨市場で大きな影響力を持つことから、クジラの動きを分析できれば今後の値動きを予測できる可能性がある。実際、2022年4月には1万ビットコイン以上保有するクジラが減少したことが明らかになり、ビットコイン価格は大きく減少した。

つまり、クジラの購入したビットコイン価格や、クジラの動きを事前に察知できれば、ビットコインの価格変動を分析する材料になるということだ。ビットコイン・クジラが増えるほどその動きは無視できないものになり、短期から中期でビットコインを取引するなら今後はクジラに関する分析が必須になる可能性がある。

クジラの動きを分析するのに役立つ仕組み

クジラの動きを分析するのに役立つ2つの仕組みについて確認しておこう。

  • クジラ・クラスター
  • アラートツール

クジラ・クラスター

ビットコインはすべての取引がブロックチェーンに書き込まれる性質から、クジラが保有するビットコインの購入価格を追跡できる。クジラが一斉にポジションを立てた価格であるクジラ・クラスターを知れば、今後の値動きを知るのに役立つだけでなく、クジラよりも安く購入できていればサポートラインに利用できる可能性もある。

相場に対してクジラが利確するのか、下落に対して価格を維持するために買い増しをするのか読むためにも、クジラ・クラスターの把握は欠かせないといえるだろう。

アラートツール

クジラの動きがビットコイン市場において無視できない存在になったことから、クジラの動きをチェックし、変化があった場合にアラートを発するツールも存在する。具体的には、クジラの動向を常に追跡し、Twitterやメールでアラートを発する「Whale Alert」、クジラの動向を分析し、上昇トレンド・下降トレンドを察知する「Whalemap」がある。

こちらのツールはクジラの動きを分析するのに役立つが、必ずしもアラートツールにより価格変動を予測できるとは限らない。ツールの使用とそれに伴う取引は自己責任で行い、得られた情報はあくまで参考程度に留めることを推奨する。

ビットコインが投資対象として注目されるほどクジラは増加する

クジラの参入は、ビットコインが株式・不動産などの伝統的な資産と同様に投資対象として注目されていることを意味し、今後もその参入数は増えていくことが予想される。仮想通貨ニュースから情報を集める場合は、クジラの動きに関するニュースも注視しよう。